富山県リハビリテーション病院・こども支援センター

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神経内科のご案内

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富山県リハビリテーション病院
神経内科の診療活動の紹介

平成27年9月 神経内科 井上雄吉

 当院はリハビリテーション専門病院ということもあり、急性期の患者さんが少ない点が総合病院における神経内科とは異なる点がありますが、基本的に総合病院と同様に、すべての神経障害の患者さんの診療を行っています。当院は日本神経学会准教育施設に認定されており、神経学会専門医の資格が取得可能な研修施設です。
 当科では、特に以下のような大きく4つの領域に力を入れて診療を行っています。

  1. 脳血管障害や脳外傷などの中枢神経障害後の機能回復の促進を目指す:
    傷害を受けた脳の可塑性(plasticity)の促進や、可塑性の異常(maladaptation)によって生じた神経障害の改善を目指すもので、いわゆる機能回復神経学(restorative neurology)にあたるもので、現在ではニューロリハビリテーション(neurorehabilitation)と呼ばれるものです。当院では磁気刺激装置が平成11年から導入されましたが、これを用いて反復経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation, rTMS)を行い、半側空間無視や失語症などの従来のリハ訓練だけでは改善が困難な難治性の障害への治療を試みてきており、その成果は多くの学会や、学術誌などに報告しています1)〜5)。rTMSは、その刺激頻度から大きく、1Hz以下の低頻度刺激と、1Hz以上(主に5Hz以上)の高頻度刺激の2つに分けられます。低頻度rTMSは刺激直下の脳組織に抑制的に作用し、高頻度rTMSは促通性に作用すると考えられており、rTMS治療はこの作用により傷害を受けた脳の可塑性・再構築を促すものです。
     大脳は、健常な状態では左右半球は互いに抑制しあって拮抗し、均衡した状態にあり、脳機能が正常に働いていると考えられています(interhemispheric rivalry)。もし、一側の半球が傷害されると、この左右のバランスが崩れ、傷害と反対側の健側半球は対側からの抑制がとれて過活動の状態となり、これによりさらに傷害半球への抑制が増強して、傷害半球の機能が一層低下することになります。半側空間無視(図1)や失語症などの発症機序の一つとして、このような病態が考えられています。この不均衡状態に対しては、低頻度rTMSで健側半球を刺激してその過活動を抑制するか、または傷害半球に高頻度rTMSを与えることでその機能を高めて、左右半球間のバランス異常を是正することにより、機能障害の改善が期待できます。当科では現在までに、半側空間無視や運動性失語症で傷害半球に低頻度rTMS治療を行い、その有用性を報告してきました1)~7)
     平成22年12月からは新しい磁気刺激装置が導入されました(図2)。この装置によりrTMSの効果をさらに高めることを目的に、シータ―バースト刺激(theta burst stimulation, TBS)8)(図3)という新しいrTMS刺激法を用いて、最近片麻痺における上肢機能障害(麻痺や運動失調)や失語症などの治療を作業療法科や言語聴覚科と共同して行っています。TBSは、20ms間隔(50Hz)、3発の刺激を、5Hz、2秒間与えるもので、これを20回連続的に刺激する連続性(continuous)TBS(cTBS)と、8秒おきに20回刺激する間歇性(intermittent)TBS(iTBS)の大きく2つに分けられ、前者のcTBSは刺激直下の脳組織に対して抑制的に作用し、後者のiTBSは促通性に作用します。TBSの作用は通常のrTMSよりも効果が強く、効果の持続が長いとされており、現在はこの方法を用いてrTMS治療を行っています。現在作業療法科と共同して、傷害半球にはiTBSを、またそれと同時に麻痺肢前腕伸筋群には随意運動介助型電気刺激(IVES)を行う併用療法(ハイブリッド療法と名付けています)を新たに行っています(図4)。現在まで、片側の運動失調を主症状とする脳卒中において、特に巧緻運動障害(器用さ)、関節能動運動可動域、Motor Activity Log(MAL)での患肢の使用頻度・動作の質を有意に改善することことが分かり報告しました7).今後は、もう一つの非侵襲的脳刺激法の一つである経頭蓋直流電気刺激法(transcranial direct current stimulation, tDCS)の導入も近々行われる予定であり、非侵襲的脳刺激治療(non-invasive brain stimulation, NIBS)をさらに発展させていくつもりです。
    • 現在、当科で行っているrTMS治療の対象の神経障害としては以下のものがあります。
       太字は特に重要なもので、これらは病院の倫理委員会でも承認されています。
      • 片麻痺における上肢機能障害(麻痺・運動失調・巧緻運動障害.作業療法科と共同)
      • 高次脳機能障害:失語症、半側空間無視(言語聴覚科や作業療法科と共同)
      • ジストニアなどの不随意運動
      • 嚥下障害(言語療法科、消化器内科と共同)
  2. 神経難病に対する診療:薬物療法、リハ治療
    神経難病診療は当科の最も重要なものの一つになります。診療に制限や限界もありますが、患者さんの生活の質(quality of life、QOL)の改善を目標に、薬物療法やリハ訓練、rTMSなどを用いて治療を行っています。特に、神経難病に対するリハ治療の構築は重要です。
     対象とする主な疾患としては、パーキンソン病やその関連疾患(Lewy小体型認知症DLB、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症)、多系統萎縮症(MSA)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性筋炎などの筋疾患、アルツハイマー病やDLB、前頭側頭型認知症などの認知症、ジストニア・振戦・ミオクローヌスなどの不随意運動、てんかんなどがあります。今や、認知症てんかんはcommon diseaseとなっており、この領域の患者さんが益々増加することが予想され、今後の重点診療領域と考えています。
     現在までの診療では、パーキンソン病や多系統萎縮症の認知障害や言語障害・嚥下障害などの非運動症状は重要と考え、これらに注目して診療を行ってきており、論文や学会発表なども行ってきました。神経難病の診療は、多職種が協働して取り組む診療体制が非常に重要となります。当院はリハ専門病院ということもあり、基本的に様々の障害をもつ患者さんを多職種の人々が協力して診ており、このような診療体制を築きやすいという利点があります。
     当院は、現在までパーキンソン病などの神経難病について保健所や患者会主催の研修会、県難病相談・支援センター主催の相談会への参加・協力、医療従事者への研修活動などを積極的に行ってきました。平成22年12月より重症の神経難病患者に対する介護者の休養のためのレスパイト入院事業が開始され、当院は難病医療協力病院としても活動を行っています。また、パーキンソン病関連疾患の専門外来は、第1および第3火曜日の午後隔週で行っています。

  3. 不随意運動や痙性麻痺に対するボツリヌス療法・姿勢異常に対するキシロカイン注射療法
    痙性斜頸や眼瞼痙攣、半側顔面痙攣、脳卒中後遺症・神経変性疾患・脊髄炎後遺症による痙縮、パーキンソン病などのジストニアなどに対するボツリヌス治療(A型—ボツリヌス毒素、B型−ボツリヌス毒素は痙性斜頸のみ)は活発に行っています。表面から同定しにくい深在筋への注射は技術的に難しい点がありますが、当科では電気刺激装置(クラヴィス刺激装置)を用いて深在の目標筋を同定し行っています。
     また、最近では進行期のパーキンソン病患者の軟治性の姿勢異常(camptocormiaやPisa syndrome)に対して、外腹斜筋へのキシロカイン注射治療も行っています(国立精神・神経センターで最初に効果が報告されました)。ここでもクラヴィスによる電気刺激を用いて筋の同定を行っています。まだキシロカイン注射では効果の持続に課題がありますが、多くの患者では姿勢異常の改善を認めており、注射薬の種類や注射部位などは、今後さらに重点的に研究や診療を行っていく予定です。

  4. 免疫性神経疾患に対する免疫療法:
    慢性炎症性脱髄性多発神経根炎(CIDP)や自己免疫異常が関与した免疫性末梢神経障害に対する免疫グロブリン大量療法(IVIg)、また多発性硬化症の再発予防を目的としたインターフェロンβ1a(アボネックス)やフィンゴリモド(fingolimod)による治療も活発に行っています。CIDP患者は県内医療機関でも多く、最近ではCIDPの一型で稀な疾患であるchronic immune sensory polyradiculopathy(CISP)や、糖尿病に伴ったCIDPなどでIVIgの著効例を経験し報告しています。

主な学会活動:
日本神経学会(神経内科専門医・指導医、東海北陸地方会幹事)、日本神経治療学会(評議員)、日本内科学会(総合内科専門医・認定内科医)、日本脳卒中学会(評議員、専門医、学会誌査読委員)、日本リハビリテーション医学会(専門医・臨床認定医)、Movement Disorder Society of Japan(MDSJ)、日本臨床神経生理学会(脳波、筋電図・神経伝導検査の両部門の認定医)、日本高次脳機能障害学会、日本神経心理学会、認知神経科学会、日本ボツリヌス治療学会など.

 以上、当科における診療活動について紹介しました。今まで一人診療体制でしたが、平成23年4月からは富山大学附属病院神経内科から外来診療の応援を頂いています。診療や臨床研究の充実には、多くの神経内科医の参加・協力が必要です。当科で行っている診療や臨床研究に興味があり、一緒に働いてみようという意欲のある医師の皆さんの来院を心より歓迎いたします。

参考文献:
1) 井上雄吉:半側空間無視に対する反復経頭蓋磁気刺激療法の試み. 神経治療学 2005; 22: 645-653 (http://www.jsnt.gr.jp/)(学会論文賞受賞)
2) 井上雄吉:半側空間無視に対する低頻度反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の効果と局所血流量(rCBF)の変化について.  Jpn J Rehabili Med 2007; 44: 542-553(http://www.jarm.or.jp/)(最優秀論文賞受賞)
3) 井上雄吉、荒木一富、西田勇人、藤田明美、藤本万理、青山麗子:失語症に対する低頻度反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の効果と回復過程における基底核の役割について.   高次脳機能研究 2010; 30: 496-509 (http://www.higherbrain.gr.jp/
4) 井上雄吉:失語症に対する反復経頭蓋磁気刺激治療(rTMS)の有用性(失語症のカレントスピーチ). 高次脳機能研究 2012; 32: 246-256. (http://www.higherbrain.gr.jp/
5) 井上雄吉:機能回復と脳の可塑性.  総合リハ 2012; 40: 1095-1102
6) 井上雄吉、荒木一富、西田勇人、藤田明美、岩井正英: 非流暢性失語症に対する連続シーターバースト反復経頭蓋磁気刺激(continuous theta burst stimulation)の効果について. 医報とやま 2014;1601:6-10(富山県医学会研究助成課題)
7) 井上雄吉、本江裕治、中林亜沙美ほか: 脳卒中後運動失調に対する間歇性シーターバースト刺激と随意運動介助型電気刺激の併用療法(Hybrid治療)の効果についての研究.
医報とやま 2016年1月15日号掲載予定 (富山県医学会研究助成課題)
8) Huang Y-Z et al: Theta burst stimulation of the human motor cortex. Neuron 2005; 45: 201-206

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