コミュニケーションエイド できごと まとめに代えて
ここでは,コミュニケーションエイドに関連して,見聞きしたできごとをご紹介します.ある意味では,道具を使ってこんなことにもなりうる例とお考えください.
「やっぱり私は一家の大黒柱なんだとわかりました」
この方(男性)は,ご自宅に帰られましたが,自分が家族の重荷になっているのではないかと気分的に落ち込んでいました.しかし家族に困ったことが起きたときに,自分の考えを文章にまとめて伝えることで,家族の不安は軽くできること.またパソコンに向かい作業する姿をお子さんたちに見せることで,よい影響を与えていると考えられるようになりました.
「お父さんが,こう言っているのだから,そうしましょう」
自宅復帰後のことで,ご家族と病院スタッフが相談をしていました.ところがある問題で判断に困り,結論がなかなかでませんでした.するとこの方が機械を操作して,
「XXがよい」
と言葉をつづりました.すぐに相談はまとまりました.
あとでご家族に伺うと,いかにもお父さんらしい言葉づかいだったそうです.私が操作スイッチを作っていると,
「XX会社の○○さんに相談しなさい」
と教えていただきました.相続,結婚など,ご家族みんなで相談したいことはたくさんあるでしょう.また交通事故が関係する場合,訴訟や示談などもたいへんです.相談できることは皆にとって大切なことです.
「子どもたちが大きくなったら,読んでほしいことを,書いておきたいんです」
お子さんたちに,是非言い聞かせておきたいことがある,というこの方は,はじめビデオレターを作り始めました.しかし,しばらくすると,どこまでお話ししたか,ご自分でもわからなくなってしまいました.文字で書くことは,書き手が考えを整理できる利点もあるようです.
「家族に与えた心配やご苦労に対し,感謝の気持ちを一生忘れることはない.これからの一生のなかで,1つでも2つでも恩返しをしなければならないと思っている.」
「手紙を読みたいから,スイッチは手の甲につけてください」
入院中からお友達がたくさんお見舞いに来られたこの方は,手紙を自分で持って読みたいとのご希望で,スイッチを作りました.
「朝起きて,その日に,やることがないなんて」
「60歳の人ができるなら,20歳の僕にもできるはずだ」
「若い人のはげみになるなら,私はうれしい」
お二人とも,ほぼ同じ時期にパソコン操作を練習しておられました.パソコン関係で,高齢の方ががんばる姿で,若い方は俄然やる気が出るようです.
「人間って大したものですね」
初めはうまく操作できなかったパソコンでしたが,きびきび使えるようになりました.そのときの一言.
「障害者ボートって,まだないみたいですね」
インターネットで検索の練習中,ボート(漕艇)競技に大変興味を示されたこの男性.お聞きすると,知る人ぞ知る選手だそうです.
03/05/15 公開臨床リハ工学サービス科にもどる