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エンチャント文字盤の音と声

第一回 音の役割と出す方法

His master's voice

はじめに

エンチャント文字盤をひとことで説明すると、画面に何か表示しクリックやタップ動作で表示を変化させたり音を出したりするプログラムです。同じ技術を使っても何を表示しどんな音を出すかのアイデア次第で、ゲームになったりコミュニケーションエイドになったりします。

こんなものをこう表示してそのときこんな音が出て、そしてこんな操作ができたらもっといいのになあというアイデアを実現することができます。こんなことを試してみたいが道具がない。そんな場合にも役に立つかもしれません。

今回はエンチャント文字盤で音を出す方法を説明します。その前にコミュニケーションエイドで音の目的について考えてみます。

声の不自由を補う方法

声が不自由な人は声の代わりに手話や字を書いて伝える筆談などの方法で自分の用件を 相手に伝えることができます。

では声と手の両方が不自由な人の場合はどうするでしょうか。このような場合はボタンを押す、いきを吹きかける、瞬きするなどその人ができる方法で機械を動かして言いたいことを声や文字にして相手に伝える方法が現在一般的に行われています。 そしてこのような道具はコミュニケーションエイドと呼ばれています。

むかしことばが不自由な将軍がいて、聞き取りできるおつきの家来が通訳をしていたそうです。しかしいまは家来もいませんし、気兼ねのないコミュニケーションエイドを使って、目の前の人には声や文字で、離れた人にも電子メールなどで伝えることができます。 またこれらの全てを自分の力でやっているひとも少なくありません。 このように不自由はあっても、自由に自立して時間を過ごすことがコミュニケーションエイドで実現できるかもしれません。 自分の意思を表明できる。決定に参加できる。自分だけの時間や世界を持つことができる。このよう取り組みがその人の人間らしさを保つことにつながると考えられています。

音が出るとなんの役に立つか

コミュニケーションエイドが価値ある取り組みであるのはわかっても、 重度な障害を持つ人にとって取り組みは決して容易ではありません。 ベッド上での長期間安静にしたため身体の能力が低下していることもあります。 病気や怪我のため心の力も弱くなっているかもしれません。 そのような人が神経を集中して何かに取り組む苦労は想像できると思います。

コミュニケーションエイドを使えるようになるには、その人がもつこのような問題をひとつづつ解決しながら進んでいく必要があります。 最も基本的なことは間違いをできるだけ少なくすることです。 間違った文字を入力してしまうと、悲しく、くやしく、腹立たしい。自分いやになってしまう。これは誰も同じです。 なんでもはじめからうまくいくことは滅多にありません。だからコミュニケーションエイドにも、失敗しにくくできるだけ苦労しない工夫があらかじめ必要になります。

そんな場合は目だけでなく耳にも訴えかけるために音を利用します。 具体的には、ボタンを押したりクリックやタップなど何らかの操作をした時に音を出します。 特に軽くて小さいボタンやタッチパネルのように押したか押さないか触ったか触らないかわかりにくいと間違いが多くなります。また手にしびれがあったり皮膚が乾燥して固くなっているとさらに微妙な操作がわかりにくくなります。 そこで音を出して押したことがわかりやすくすると間違いを減らすことができます。 音を出すほかボタンが光ったりしても間違いを減らす効果が期待できる。 バスの停車ボタンは身近な例と言えます。

このほかスキャン操作では音がタイミングを取る助けになります。 また児童生徒など若い人の興味や関心を引くために音が役に立つことも考えられます。

音を出す方法

HTML5とJavaScriptでゲームやアプリを開発するフレームワーク、enchant.js がエンチャント文字盤の基本になっています。ゲームには電子音などの音がつきものですので音を出すのはごく簡単です。 こちらにstartと表示され音が出るだけのシンプルなサンプルp-0 を用意しました。またこちらから必要なファイル一式の圧縮ファイルがダウンロードできます。

圧縮ファイルを解凍して中を見てください。いろいろなファイルがありますが、肝心なのはjsフォルダの中にある、main.jsです。これをエディタで開いてください。たった10行しかありません。

enchant(); 
window.onload = function() {
    var game_ = new Game(320, 320); // 表示される領域の大きさを設定
    game_.fps = 10; // 進行スピードを設定
    game_.preload('gameover.mp3'); // 使う素材を予め読み込む
    game_.onload = function() { // 準備が整ったら処理を実行
        game_.assets['gameover.mp3'].play();
    }
    game_.start(); // スタートさせます
};

5行目で、音声ファイル、gameover.mp3 を読み込んでいます。
6行目で、準備が整い、
7行目で、音を鳴らしています。

7行目をコピーして3回にすれば、音も3回になります。 別の音を鳴らすには音声ファイルを同じ場所にコピーしファイル名の部分を書き換えます。 これを応用してそのほかの音をそれぞれ指定したタイミングでならすことができます。 mp3以外のサウンドファイルも再生可能ですが、より一般的で普及していてサイズも小さいのでmp3形式を使っています。

インターネット上では無料で使用可能なサウンドファイルなども入手できます。多分その全てが今回説明した方法でならすことができます。 また合成音声をファイル形式で出力できるフリーソフト等もありますので『音』に限らず『声』も扱うことができます。そのほかサウンドファイルを自作していろいろな音を出すことができます。

おわりに

今回はエンチャント文字盤で音を出す目的と方法について説明しました。 パソコンでもスマホでもタブレットでも音楽を再生できます。このように音を再生する機能はこれら情報機器の基本的な機能になっています。このためここで説明したようなごく簡単な方法ひとつでどの機械でも音を出すことができます。 次回は、より自然な声とことばをだすことのお話をお送りします。

参考URL

enchant.js でのサウンド再生関係


2018/03/16 公開

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