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ウェブアプリのつくりかた 7

働くウェブサーバ

WEB SERVER is working

ウェブサーバに仕事をさせたらどうなるでしょうか?

0 はじめに

前回はウェブサーバを手に入れる方法についてお話をしました。いかがだったでしょう。

サーバやウェブサイトに関する情報はネット上に具体的作業手順や経験談など参考になるサイトがありますので、パソコン関係の知識や経験がある人ならこれらを参考にすればより少ない手間と費用で目的が達成できるのではないかと思います。

『こんなことやったひとなんていないだろう』と思えてもいざ調べてみるとだいたいもう誰かがやっていて丁寧な記事になっているのが、インターネットをはじめとするこの世界の凄さだと思います。

これらを手がかりにして、できないと思えたことも自分でできるようになる。こんなふうに『自由に勉強』していくやりかたを身につけることがどんどん成長する秘訣なのだと思います。

ここで『自由に勉強』とは好きなように勉強するという意味ではありません。他を人を気にせず、自分で考え自分で決めて自分なりに勉強することです。数人で力を合わせて勉強していたはずなのに、結局習得できたのはひとりだけだったなんてことありませんか?グループ学習はこんなところがまずいので気をつけたほうがいいでしょう。あてにならないのも自分ですが、やはり頼りになるのも自分です。

さて今回は、手に入れたサーバの活用についてお話します。 手に入れたウェブサーバにどのように活用するかか。どんな仕事ができるのか。そしてその結果どんなことが実現できるのかについてお話ししたいと思います。話題の中心はウェブアプリ、Web文字盤です。

ここからは、すでにウェブサイトを立ち上げサイトを運営している人はもう十分ご存知の話と思いますが、どうかしばらくお付き合い頂けたらと思います。

じつはウェブアプリの特徴の多くが今回説明するウェブサーバの働きによって実現されています。そしてインターネットやウェブサーバはこれからもさらに改良、改善、発展し、それを追いかけるようにウェブアプリも改善されていくでしょう。

このように技術の上にどんどん新しい技術が積み重ねていきますので、機会をみて今回のような『基礎のおさらい』をしておくこともまんざら無駄ではないでしょう。

基礎があり積み重ねがあるなら将来が見えてきます。 将来があると、忙しくなり退屈はしません。 世の中には将来が不安な人も多いようですが、 もしお暇なら、基礎と積み重ねをお勧めしたいものです。

1 ウェブサーバで何ができるか

ウェブサーバの役割として一般によく知られているのが、ウェブサイト(ホームページと呼ばれるあれ)の配信です。ここではまずはじめにウェブサイトが閲覧者の手元に届く仕組みについて考えてみましょう。

ウェブサーバは、ウェブサイトを構成する『部品』である文書や画像などのファイルを保存し、インターネットに接続した利用者のパソコンやスマホ・タブレットからのリクエストに応じて、それらを送り出す働きをします。 これらを受け取ったパソコンやスマホ・タブレットのブラウザは、サーバから届いたファイルを解読してウェブサイトのコンテンツを閲覧できる形態に文章や画像に再構築して表示します。 いまご覧になっているこのページも、このような仕組みで届けられて皆さんのお目にかかっているのです。

ウェブアプリの場合は、このような文字や画像などの『部品』とともにブラウザを動かすJavaScriptなどのプログラムファイルもウェブサーバから送り出されます。そしてこれらを受け取ったブラウザが再構築することで『動くホームページ』が目の前に表示されるのです。

このような仕組みで、ウェブサイトの閲覧と同様の手軽さでウェブアプリを利用できるようになります。

ですからウェブアプリの使い方がわからないときはパソコンに詳しい人にではなく、お近くのスマホを使い慣れた高校生や中学生(もしかしたら小学生かも?)に手伝ってもらうとよろしいと思います。 理屈ではなく経験と慣れが大切なのです。

だからWeb文字盤にもマニュアルはありません。読む人も少ないでしょうから作りませんでした。

2 そしてウェブサーバに何をさせるか

例えば前々回にご紹介した、言葉をしゃべるしろいいぬのサンプルは、35行くらいのJavaScriptでできています。 これに対して、Web文字盤のJavaScriptは2000行を超えますが、基本的にはクリックしたら特定の言葉をしゃべる200組ほどの部品でできています。 つまりWeb文字盤はしろいいぬとほぼ同じ技術を、違った組み立てかたをしてコミュニケーションエイドの働きを持たせているのです。

このようにしてさらに別の仕掛けを考えて、違った目的の違った働きをする部品を何種類もつくり、それらを計画どおりに組み立てて、従来にない特殊な目的を達成するためのアプリも作ることができます。この作業はNHKのEテレ『ピタゴラ装置』を作るのに大変よく似ています。この番組はきっと論理的な考え方の育成をめざしているのかな?と考えながら私も面白く見ています。(お正月に放送されたピタゴラ工作は思考をモノにする一歩進んだ内容で面白かったですね)

マンガや小説がお好きな人たちはたくさんいると思います。いろいろ熱中して読んでいると、ふと自分でもできるのかなと思ったことはありませんか?例えばノートを一冊用意してちょこっと書いたり描いたりしてみたなんてことありませんか。

自由に使えるパソコンとインターネットがあって、自分でアイデアを持ってすこしづつプログラムの勉強をしている人は、このマンガや小説に挑戦する人とずいぶんよく似たことをしているのです。現にゲームプログラム投稿サイトを見て回ると随分お若い投稿者を見かけます。

プログラムについてあれこれ計画するときには、作ったあとどうなことが起きるのかを考えておくのはとても大切です。 世の中の仕組みや規則のいくつかは、コンピュータもインターネットもない時代にその知識や経験のない人たちによって作られています。 このため、単に便利さのために作ったプログラムが作者の知らないところで意外なところで意外な理由で役に立ったり、影響したりすることもあります。それなのに作っているときはこれにまるで気が付かないこともよくあります。 次はそのようなお話をします。

3 コミュニケーションエイドをウェブアプリでつくるとどうなるか

さてコミュニケーションエイドをウェブアプリで作るとどうなるでしょう。 コミュニケーションエイドは、お身体や言葉の不自由のためにコミュニケーションが不便な人を助けるための道具の総称です。

『言葉が不自由です』という話をよく聞くのですが、詳しくお話をうかがうと、『言葉』も『不自由』も多種多様で、さらにその困りごとはその人ごとにかなり違うということがよくあります。 このためコミュニケーションを助ける方法にもたくさんの種類があり、カードや文字盤を使う方法は比較的古くからあります。

特に重度の障害をもつ人のコミュニケーション支援にパソコンなど情報機器を活用する試みは、理論物理学者のホーキング博士で広く知られるようになり、1990年代の日本で伝の心が商品化されました。 当時このような機器は数も少なく相当高価でしたが、その後の『技術の進歩』により今ではいろいろ作ることができます。そのひとつがWeb文字盤です。

ウェブアプリでコミュニケーションエイドをつくると次のような特徴が出てきます。ただしパソコンやスマホなどやインターネットがあることが前提条件としてあります。

これまでのコミュニケーションエイドとその支給制度にはいろいろ課題もあります。すでにこの方面で仕事されている方は経験されていることと思います。そうでない方は、上の箇条書きにした言葉を、例えば『できる』を『できない』と反対に書き替えるとおおよそのところがわかるかもしれません。

これらのメリットは、無償のアプリが無償で配布されることで実現しています。

これらのメリットがある一方で次のようなデメリットがあります。

どちらもないならこれらにはいくらかの費用負担が必要になります。 しかしこのデメリットにより、ここで別のメリットが現れます。

使用する道具やインターネットはその人のものです。修理や買い替えもその人が費用を負担します。これで『福祉タダ乗り』に類した誹謗中傷は根拠を失います。(元々大した根拠はありませんが)もう気にする必要もありません。

また負担といっても他の人と同じです。故障したときの修理や買い替えも不自由がある人もない人も同じやり方ができます。だからどうすればいいかはもう多くの人が知っていますからそれと同じようにすればいいのです。もうあれこれ心配する必要はなくなります。

また新品でも中古でも、借りてももらってもかまいません。どれがいいかはそれぞれ考えて自由に決めることができます。

パソコンやスマホなどの情報機器が珍しかった時代ならこのような話は通用しません。しかし今では多くの人が日常的に使用し、小学校でも教えています。また近くでそれなりの価格で流通しています。 こんな時代ですからその人の事情に合わせていろいろ工夫できるようなやり方が便利で社会的コストも小さくできると思います。

4 おわりに

今回は手に入れたウェブサーバを動かして仕事をさせる方法と目的についてお話をしました。

今、インターネットには動画や百科辞典など多くの無料サービスがありますがこれらも類似の仕組みで動いています。これらがもし有償だったらここまでの発展はなかったでしょう。つまりあえて儲けようとしなかったから存続し発展できたのだと思います。

ウェブサーバはコンピュータですから、人間を遥かに凌ぐスピードで休みなく仕事をします。 Web文字盤は現在のところ、月に約150件の利用があります。もしこれが10倍100倍になってもサーバには余力が十分にありますので特に心配していません。

それよりもサーバを使ったこのようなやり方をすれば、コストがゼロですので赤字にもならない。人がいないので人件費も雇用もない。雇用がないから雇用を守る苦労もない。また事務所も事務も必要ない。収益もないので所得税もない。無料だから消費税もない。税がないから滞納もない。経営もないから経営不振もない。だからこれで倒産するわけがない。そして最後に私がいなくなっても問題ない。 アプリを公開し権利を放棄すれば、あとは誰かがなんとかしてくれるでしょう。その誰かがいなくなったりアプリの利用がなくなったとき、ようやくこの役目が終わったことになります。ボイジャーみたいな話です。

先進的な、ある意味で先の見えないリスクのある取り組みを立ち上げる際には、上のような特徴を十分に活かしてリスクを回避し『消えてなくならない』工夫が生き残りのために必須です。

すでにお話したように、コミュニケーション支援には多種多様なツールが必要になります。言葉や文字がよくわからない人や漢字を使いたい人たちのニーズにはまだ対応していません。またまだコミュニケーションエイドのない国、言語もあるかもしれません。しかしもうこれはどうやら私には手に負えないように思います。

コミュニケーションの他にも、助けが必要な人たちがいます。 そのような目的のために多くの人たちに技術を活用していただきたいと思います。

今回はサーバを使った、ちょっと面白い話をしました。 もしこんな話が気に入ったら、どうぞ自由に勉強していってください。 何年か頑張ればかなりのものが実現できるでしょう。 この方法で何をして何に使うかは、あとは自由です。好きにやってください。

そんな誰かの力になれたら私は十分うれしいです。

参考URL


2024/01/12 公開

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