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Web 文字盤 モニター調査

第2回 モニター開始

無線スピーカー

相手が聞こえにくいとき
無線スピーカーが役に立ちます

0 はじめに

いよいよWeb文字盤が実際に使用する人の手元で働き始めました。作り手としては十分やっていけると自信はありますが、不安も心配も期待もあります。これは世の多くの親御さんの心情とほぼ同じです。作り手としては使う人のためになるように考え作ったわけですが、それが現実に使う人の気持ちとずれていないか、現実に通用するか、あるいは配慮が十分であったかどうかがこれから明らかになってきます。まずは毎日毎日無事に動き続けてくれるだろうか。そんな心配から始まったモニター調査の第二回をお送りします。

1 モニター調査はじまる

モニター役のこの方(以下モニターさんと呼ぶことにします)はタブレットをお渡ししたその日から施設や病院内をあちこち電動車いすで動きまわりWeb文字盤を使って会話を始めました。またモニターさんは充電などタブレットの取り扱いは全部自分でできました。またそのほか特に困ったことも起きなかったそうです。また平均的な使い方では数日に一回程度充電すれば問題なく使用できることもわかりました。これでご本人や周囲の人々の生活への負担も少なく継続して使用できそうです。まずひと安心できました。このように慣れない道具が生活の中に入ってくるとそれだけでご本人や周囲の人が苦労したり困ったりすることもありますのでこのようなところには気をつけるべきだと思います。

また現状ではWi-Fi(無線LAN)を利用できる場所はまだまだ限られています。ここがインターネットにつながれば使用できるWebアプリとして開発したWeb文字盤の弱点なのですが、これを補うためオンラインでは起動時に自動的に更新を確認し、オフラインではそれまでの蓄積を使いオンラインと同様に動作する『いいとこ取り』の仕組みを組み込みました。そして使用する人は特にこのことを意識しなくても、オフラインWebアプリ機能が正常に動作し利用できることが改めて確認できました。(つまりボーっとやっていても大丈夫なわけです)このような機能はインストール作業をかんたんにし、その後のメンテナンスの自動化や省力化が期待できます。

これらの機能は自分で事前に十分テストはしてあったのですが、自分の手が届かないところでなにか起きるのではないかと心配しました。インターネット接続があれば『使い始める』ことができ、その後は接続がなくても『使い続ける』ことができる機能はWeb文字盤開発のひとつの目標でしたので、想定外のトラブルもなくほっとひと安心できました。

以上のように、人間の方も機械の方も順調にスタートできました。

2 ところがコロナが始まった

使用開始から何日かするとモニターさんが私を訪ねてきて、感想や改善について次々と有益な意見を知らせてくれました。もちろんそのときはWeb文字盤を使って文章を作り、見せ、そして聞かせてくれました。またWeb文字盤はそのほかの話し合いにも使用しました。あちこちでよく使うのでモニターさんは短い期間で基本的な使い方をすっかり身につけてしまいました。これはなかなか大したもので感心しました。

ところがその後、新型コロナのためこのように直接会ってお話しするのはよろしくないと知らせがありました。仕方がありませんので用件を紙にメモしてやり取りすることにしました。でもモニターさんは実は文字を書くのがすこし苦手だったので迷っていました。しかし他にいい方法がなかったのでお願いしてやってもらうことになりました。

私の部屋のドアにダンボール箱のポストがついています。何日かに一回ここにモニターさんからメモが届きます。そこには毎回いろいろな相談、アイデア、提案が入っていました。私はその返事を書いてモニターさんが利用している施設の担当者さんに届けました。タブレットの手直しも担当者さんに仲介してもらい、社会的距離は十分確保できました。

ところがこんなメモのやり取りを繰り返しているうちに、モニターさんはだんだん字も文章も上手になってきました。そしてはじめはメモ用紙を使っていましたがこれがやがて綺麗な便箋と封筒に変わりました。なんと新型コロナ禍がきっかけでモニターさんは字も作文がうまくなりました。そしてお友達に手紙をよく出すようになりました。このような話はあとからお聞きしたのですが、苦労が報われたのがなによりです。ああ、よかったよかった。

モニターさんはWeb文字盤の使い方にも慣れました。タブレットも問題なく順調に動きました。また周囲の人たちもタブレットを使ったモニターさんとの『コミュニケーション』に慣れてきました。これでいよいよWeb文字盤の評価と改善にとりかかる準備ができました。このようにご本人も周囲も十分習熟するまで十分時間かけることがよりよい評価のために大切だと考えています。不慣れなままじゃあいけません。

3 最初の改善

まず最初に取り掛かったのは音の改善でした。まず最初は読み上げ音声の大きさです。モニターさんの居室は二人部屋で同室の人と一緒に生活しています。この部屋でWeb文字盤を使う場合はやはり音量はひかえめに、そして談話室や食堂では聞こえやすいようにいくらか大きめの音でと場所によって音量を適切に調整して使いたいところです。

タブレットの音量の調整は側面の小さな音量スイッチを使うか、または『設定』から『音と通知』でも調整できます。モニターさんはすこし手が不自由とのことでしたが実際に試してみると側面のスイッチで音量の調整ができました。このほか音量調整アプリが何種類かありますので、お使いになる方に合わせて音量調整方法を選べます。どれかがうまくいくかもしれません。

しかし操作の際の電子音(文字盤切り替えや文章切り替えの際の電子音)は読み上げ音声と異なり操作する人にさえ聞こえればよいのでですが、そこでこれらの音量をもっと小さくして欲しいとの要望がありました。そこで3種類の音声ファイルを音量をおよそ半分に作り直しました。(SoundEngineを使用 参考URL参照)これらを試してもらいちょうどよい音量であることを確認しました。

4 市販品を使用することのいくつかのメリット

一般の製品のほとんどは、より多くの人々が、おとなもこどももそして高齢の方々も、使いやすいように考え作られています。そのためいくらか不自由があっても取り扱いできることがよくあります。ヒット商品などたくさん売れた商品ではこれと言った欠点が非常に少ない傾向があります。このほか普及したヒット商品なら使い方を知っている人もまたよりたくさんいます。これで使い方がわからないときにたずねたり、じぶんの苦手な操作を頼んだりできます。そしてこれらのやりとり自体が、いま実現しようとしているコミュニケーションの一部です。頼んだり引き受けたりする人間関係はこんなことからもできてくると考えられます。

市販のタブレットをコミュニケーションエイドに利用すると持ちやすいケースや滑りにくい表面加工(これを一から作るのは大変な苦労が予想されます)のほかにこのようなメリットを得ることができます。

音についてもう一件問題が発生しました。新型コロナのためにあちこちに飛沫防止の透明カーテンやアクリル板が取り付けられるようになりました。このような状況でタブレットの音量を最大にしても、Web文字盤の声が相手の人によく聞きとれないという問題がおきました。これは一般の人の会話でも同様で、耳に手を当てて「はーなんですか?」という姿があちこちでいまでも見られます。このような事情で、Web文字盤から一段と大きな音が出せないかという要望が届きました。

タブレットやスマホは大変普及がすすみ、多くの人が電話通話以外のいろいろな用途に利用しています。このため様々な付属用品が市販され流通しています。その中には音楽を楽しむためのイヤホンやヘッドホンや外付けスピーカーが何種類もあります。このようなものを利用すればこの問題も比較的安価に解決できるのではないかと思われます。調べるとBlueTooth(無線式)の小型スピーカなら比較的取扱が簡単で大きな声を出せそうです。手頃な価格のもの(このページのトップ画像参照)を早速取り寄せてテストと取扱や説明の練習など準備をしているうちに飛沫防止のカーテンは診察室から取り外されこのスピーカーの出番はなくなりました。(残念)しかしある研修会でWeb文字盤のデモを広い間隔で座った10人くらいの人たちにしたときもこのスピーカーは安くて小さい割にずいぶん役に立ちました。(学校の朝の会など司会をする場面でもいいかもしれません)

このように、スマホやタブレットといったすでにかなり普及している機器は多様な人々に買ってもらえるように、いろいろな機能がついています。またその機能を活用するための派生商品がたくさん出ていて広く使われています。またこれらは価格も手頃にできています。一般のスマホユーザの中にはこれら商品知識に詳しい人も少なくありません。これは不自由を持つ人のニーズに応える場合にも不自由のハードルを越える場合にも活用できる特徴です。Web文字盤のユーザに困ったことが起きても、周囲のスマホ、タブレットユーザの知識と経験でその問題を解決に近づけることができるかもしれません。

「私の無線スピーカーはこの人のために使えるかな?試せるかな?」(遠くの専門家より近くの知り合い)

市販品を利用するとこのようなメリットも期待できるでしょう。これこそがWeb文字盤をパソコンでもスマホでもタブレットでも使えるようにしている理由です。

5 おわりに コミュニケーション支援から機器操作支援へ

コミュニケーションエイドを操作できるかどうか、理解できるかどうかを試したい人がいるのですが、、、という相談をよく受けます。

検討を重ねても結局やってみないとわからない場合もあります。またその結果うまくいく見込みが得られれば先の見通しもつくことでしょう。次につながるいい結果がでれば試して見るのも悪くありません。でもうまくいかなかった場合、『残念でしたね。ごめんなさい。ご苦労様』これでおしまいでは困ります。

うまくいかないのは、スイッチが合っていなかったのか?設定が合っていなかったのか?道具が合っていなかったのか?練習が足りなかったのか?どう改善すればうまく行くのか?一体どこが良くなかったのか?これらを考えずに済ませていては今後、試した人やご家族の納得が得られにくいことも増えていくことでしょう。ここであきらめるのか?それとも取り組みを続けるかを決めるのも難しく、これはこれで悩ましい状況になります。この仕事の第一のハードルがここにあります。

また、できないと思っていたけれどしばらくやってみたら意外にうまくできたとかいろいろ工夫したらできたといった話もそれほど少なくありません。それまで苦手と思っていたのに字がうまくかけるようになった今回の話も似たところがあります。

このような理由で、試験のような一発勝負ではなく、その人のよいところを引き出すための試みのひとつとして、気長に楽しんでコミュニケーションエイドに取り組んでいただきたいと思います。

さらにコミュニケーションは誰もが好きなものではありません。人付き合いの苦手なひとも、口数の少ないひとも少なくありません。そんな人が病気になってコミュニケーションエイドを使ったからといって雄弁になるわけでもありません。また難しい病気のため本来話好きだった人が寡黙になることもよくあります。このような事情ですのでコミュニケーションエイドを拒否されたりいやがられても、『それじゃあしかたありませんね』と言っては困ります。

コミュニケーションはお好みではないけれど、自分でテレビやパソコンを使いたい人はかなりいます。

スイッチを操作して身の回りの家電製品を操作することはすでに実用化されています。パソコンを操作して文章を作ったり、離れたひととコミュニケーションしているひとも通販で買い物をするひともいます。在宅勤務もできないものでもありません。

少なくとも現在市販されているコミュニケーションエイドがうまくいかないから、ご本人が拒否したからという理由で取り組みをやめてしまうのは実にもったいないことです。似た道具ややり方でそのほかの何かできるかもしれません。そして何よりも

『ああこんな病気になって自分ではなにもかも出来なくなった。』
そんなこと思っている人に自分でできることがまだまだあることにこれがきっかけになって気づいてもらえるかもしれません。

ですから取り組みの際はその人が楽しんでもらえるように、気づきが得られるようにできるだけ長く楽しい時間を持てるようにじっくり取り組んでほしいものだと思います。

多くの方は取り組んでいるといくらかでも上達し理解も進みます。不自由をもつ人はなにかと時間がかかりますが、何かできるようになればうれしいことにかわりありません。反対にうまくいかないことが続くととかくつらい気持ちになりそれで取り組みをやめてしまうのはいくつかの意味でお気の毒で残念なことです。

このような理由で、『残念でしたね。ごめんなさい。ご苦労様』これでおしまいでは困るわけです。

このような取り組みをやるためには、様々な道具がたくさん必要になります。どうやったらこのような夢物語が実現できるでしょうか。ここ数年このことを考えて可能性を開くための取り組みを行っています。

参考URL


2020/09/14 公開

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