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障害をもつこどもたちのためのおもちゃ 11

楽しい犬の飼い方と育て方 その1

ーいぬがでてきてワンとなくおもちゃのたのしいつくりかたー

しっぽをふっているしろいいぬ

アニメーションを作りましょう

0 はじめに

『いぬとあそぼう』と題して、おもちゃをいくつか作って紹介しています。 紹介したサンプルをご覧になって、これはどんな仕組みになっているのか、どんなふうに作られているのか、自分でも作れるのだろうかと思っている人は、、、まあそれほど多くはないと想像しています。

なにしろこれは一般の人々に受け入れやすいテーマではまるでありませんし、みんなで力を合わせて分担して取り組めばきっと実現できるというものでもありません。しかしその一方で必要なことがきちんとできさえすればひとりの個人的努力で実現できます。

このような事情ですので、ごく少数でも関心を持っていただける方のために、どうやって作ったのかとその背景や理由について今回説明したいと思います。

1 不自由を持つ人の生活改善はスイッチから

マウスクリック(タブレットの場合はタップに相当)で白い犬が尻尾を振り上げてワンと吠えるサンプル、しろいいぬは、スイッチ操作支援の取り組みのごく初期に使用するために作りました。

不自由を持つ人が何らかの機器を操作して生活を改善しようといった取り組みをする場合にまず一番最初におこなうことは、どんなスイッチをどう使うか、または使えるかを考えることです。 通常の不自由の少ない人々はどのスイッチを使ってもそれほど大差なく特に苦労もなくできます。しかし不自由が中くらいではうまく使えない場合が増えてきて、不自由が大きい人ではうまくいくことがぐっと少なくなってきます。また苦労や失敗が増えたり疲れやすいなどの別の問題も出てくることがありがちです。また同じスイッチでも置き場所や角度が少し違うだけで使いやすさが変わってしまうこともあります。さらに体調などによりうまくできたりできなかったり結果が大きく変動することもよくあります。

ご高齢の方では、机やいすや照明などが変わったために手作業がやりにくくなったり、反対に楽にできるようになったりすることもあります。またパソコン作業ではキーボードやマウスやモニタが変わると疲労感が違うといった経験をされた方もおられるでしょう。このように道具や環境の違いを埋め合わせる『身体のゆとり』がその人に少なくなったとき、例えば非常に疲れた場合、あるいは反対に非常に高い目標を目指す場合、例えば超高速でノーミスをねらう場合は、使う道具をよくよく注意して選ばなくてはなりません。

さてスイッチをいろいろ準備して早速作業にかかるとします。このときブザーがなったりLEDが光ったりすると、スイッチがうまく操作されたことをご本人や周囲がわかりやすくなります。これであれこれスイッチを取り替えたり、位置や角度を変更したりして良し悪しを試す作業がやりやすくなります。ある程度以上の年齢の方ではブザーやLEDなどで十分やっていけます。

2 しろいいぬはこどもさんへの合理的配慮

しかし年少の方の場合は、時として能力が十分発揮できないことがあります。つまり、「つかれた」「おもしろくない」「あきた」「やすみたい」「いやだ」「帰りたい」などです。こうなるとスイッチの話などまるで先に進みません。ところが同じ人が時と場合によって見間違うほどの集中力と持続力を発揮することもよくあります。どうしてあれがこっちの場面で出ないんだ?とお考えになる親御さんも少なくないことと思います。こどもさんの場合はこここそ気をつけたいところです。

類似の問題を解決するために、多くの小児科診察室には各種のおもちゃが用意され気を紛らわせるために使用されています。スイッチ選びの場合は、気を紛らわせるのではなく、作業に集中してもらうのが目的です。 スイッチを押したらなにかおもしろいことがおきるおもちゃの目的はここにあります。そのひとのベストエフォート(最大の努力)をコンスタントに発揮してもらい、『やればできること』と『がんばっても難しいこと』の境目をしっかり知るために、つまりスイッチ操作能力の評価のために、しろいいぬが吠えるのです。

またこどもさんにとって、スイッチを押せばいぬが吠える、こうすればああなる、原因と結果の関係を理解し覚える知的な能力も大切です。例えばいぬが増えたり、ねこに変わったり、スイッチが増えたときにこれがますます大事です。

このような取り組みにより、その人がどのくらい考え、どのくらい行動(この場合スイッチ操作です)できるかを周囲が把握することが一番目の目標になります。

3 アニメーションがいいかもね

市川冽さんはむかしこんなことを私に教えてくれました。 『こどもさんを相手にするときには、すぐに飽きちゃうから、あらかじめ準備しておかないといけないよ。』

なつかしいですね。当時は私も若かった。ということで、こどもたちが大好きで飽きないものは何か?と考えてみるとやっぱりアニメでしょう。小学生くらいになるとマンガもいいですね。

こどもさんの様子をみていると、DVDを何回も繰り返して見ています。どうやらストーリーではなく絵が動くアニメーションそのものが強くひきつけるようです。その他にお人形が動くのにもひきつけられるようです。

アニメといえばパラパラマンガを連想しますが、実はパソコンを使うと手描きよりもかんたんに品質の高いアニメが作れます。さらに絵をパラパラうごかすのも自動にすれば扱いがかんたんになります。幸いなことにアニメは情報機器と相性がいいのです。そういえば最近のアニメはコンピュータ全盛ですね。

4 アニメーションをつくるには

パソコンでアニメといえば、まず最初にGIF(ジフと読みます)アニメーションを思いつきます。これは複数のGIF形式の画像ファイルを順次切り替えてアニメーションを作る方法です。GIFで検索すると実にたくさんあって時間がつぶせます。

例えばこのページのトップのしろいいぬがしっぽをふっているアニメーションは、 下記の二つの画像を、10分の1秒間隔で切り替えています。

アニメの原画二枚

GIFアニメーションについて詳しくお知りになりたい方は文末の参考URLをご覧ください。

この方法を用いれば、ピタゴラスイッチの『こんなことできました』を自分で作ることもできますので、関心のある方は一度お試しください。 幸いGIFアニメーションをつくるWindows用ソフト(Giam)が無料で存在しますので、これを使うと随分楽ができます。

Giamの画像

Wikipediaの記事には、GIFアニメーションの代替方法としていくつか紹介されています。その二番目にJavaScriptで画面を切り替える方法も紹介されていますが、しろいいぬをはじめWeb文字盤やWebToyはJavaScriptを使って画像の切り替えを既にやっています。

手始めのアニメーションはこのくらいでいいでしょう。更に発展させたくなったらまた勉強することにしましょう。

6 絵を描く=画像ファイルをつくるには

アニメーションを作る道筋が明らかになってきました。 道筋を明らかにして目処を立てるのは仕事をとくに複雑な仕事を行うには大切な下準備です。見通しもないままに始めて途中で壁にぶつかり突破できないとみなさんが困ります。

料理では段取りをつけるなどともいいます。食材の調達、調理器具、調味料、食器などそしてレシピ。料理番組でおなじみの準備と、あとはスケジュールですが、多少のアレンジは利きますが、そのうちどれかがうまく行かないと残念なことに完成できません。

さて、ここでアニメーション作りには絵が必要です。 今回の犬の絵は、おおよそ次のような手順で自分で描きました。 まず紙に鉛筆で下書きをして、それを描画ソフトで仕上げました 描画ソフトは無料でもかなり強力なものがいくつかあります。下はpaint.netの例です。

Giamの画像

またシンプルでコンパクトなものもあります。Windows付属のpaint、paint3dもかなりのことができます。使う人の技量と目的に合わせた道具を選ぶことが大切と思います。

さてしろいいぬでは 待ち受け画面の尻尾をふっているアニメは、二枚の画像から作りました。二枚目の画像は一枚目をすこし書き換えて作りました。 アニメーションではこのように部分的に異なる複数の画像が必要です。しかしこの作業ははパソコンを使うとぐっと楽になります。

余談ですがGIFアニメをLINEで送ると相手先でも動きますのでなかなか面白いことができます。お試しになったことはありますか?

7 きょうはここまで

皆さんいかがだったでしょうか。今回はこどもたちに興味や関心をもって取り組んでもらえるようにするために、アニメーションを作る方法について説明してきました。

絵の作り方や動かす方法は他にもいろいろありますが、最初は今回ご紹介した方法から始められるのがよろしいと思います。 この際、手間や時間をできるだけ節約するように、手順の工夫など効率を上げるように注意してください。とにかくマンガとアニメはチョー時間労働です。 そのためにはパソコンなどの情報機器の活用とインターネットにある無料の素材の利用も大切です。

次回は、これらの材料を誰かさんのスマホの上で動かす方法について説明したいと思います。

参考URL


2022/03/28 公開

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