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はじめに

コミュニケーションエイドって何だろう?コミュニケーションって何だろう?

何らかの原因で,会話が出来ないために,自分の状況や考えや希望を相手に伝えることができない人がいます.ここで人間関係を円滑に進めるためにもコミュニケーションが重要であることは,いまさら言うまでもありません.言葉は人間を人間たらしめる必須の道具のひとつです.
そのような需要に答えるために,コミュニケーションエイドと呼ばれるものがあります.
有名な例として宇宙物理学者のホーキング博士がお使いの合成音声発話装置があります.多分,テレビなどでご覧になった方もおられるかも知れません.博士はこの道具を使用して,著作,講演,日常会話をされています.

では,何らかの方法で作文し,それを声や手紙にして相手に伝えればそれでコミュニケーションは達せられるのでしょうか?
おなかが減った,眠たくなったと泣く赤ん坊にとって,泣き声そのものがコミュニケーションの手段です.伝えたい内容が単純な場合は,このように方法自体も単純で済みます.笑顔や泣き顔もコミュニケーションの手段となり得ます.
では迷子になった小学生では,自分の名前と親の名前と住所と電話番号を言えれば,例え涙声であっても,これで目的を達成できるでしょう.
言葉の通じない外国のかたに身ぶり手振りで道を教えるのも,コミュニケーションの手段と考えられます.
好意を持つ異性へ送る言葉は,古来より最も高等なコミュニケーション技術が要求されるとされています.

このようにコミュニケーションにはいろいろありますが,コミュニケーションエイドは上の例において,どのようにことがらをどのように補助(あるいは置き換え)できるのでしょう.このように考えると,良くわかると思います.
コミュニケーションエイドは,コミュニケーションの成立を補助(AID)するものではなく,単に,発話,発声,書字等を補助する道具であることがご理解いただけると思います.

言葉さえあればコミュニケーションできる人が,言葉を失ってしまったら,コミュニケーションエイドは役に立つかもしれません.しかし言葉があってもほどほどにしかコミュニケーションできない人には,コミュニケーションエイドは,多分,ほどほどにしか役に立たないと考えられます.

歩けないから車いす,話せないからコミュニケーションエイドというわけにはいきません.こう考えると『コミュニケーションエイド』というのは,誤解を与えやすい名前ですね.
以前,『コミュニケーションエイドさえ手に入れれば,コミュニケーションできると思っていた』という方とお会いしたことがあります.コミュニケーションエイドも道具のひとつに過ぎません.使い方や生かし方によって,結果に大きな違いが現れることがあります.

「たとえ手助けが必要でも,自分で決定できるならば,それは心の自立である」との意見があります.(詳しくはこちらをご覧ください http://www.kokoroweb.org/main/detail11.html
退院後の生活について,ご家族と病院関係者が判断に迷ったとき,たどたどしい人工音声が皆を納得させたこともあります.
ここでご紹介することがらが,コミュニケーション回復に少しでもお役に立てれば幸いと考えます.

コミュニケーションエイドの範囲はかなり広く,透明文字盤や市販の機器も多く出回っています.しかし当科ではほとんど扱ったことがありませんので,ここでは説明いたしません.

コミュニケーションは教育と関係が深い分野です.特に大人でない低年齢の人が対象の場合は関係者のアドバイスがまず必要だと考えます.


03/05/15 公開

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