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スイッチ

機器を操作するためのスイッチ作りは,すでに多くのかたが取り組んでおられます.また市販の製品も数多く出回っています.日本リハビリテーション工学協会のコミュニケーションSIGによる各種講習会や出版などの数々の活動により,私も勉強させていただきました.

ですから,何を今さらと言われると,全くその通りとしか申し上げられません.ですからここでは,当方で製作しているスイッチの紹介と若干の説明をするだけにいたします.


基本方針 はやい 安い こわれない

スイッチ作りで大切なことは,はやく作れること,安く作れること,そしてこわれない(=こわれにくい,なおしやすい)ことだと考えています.よって外見はかなり悪い場合が多いです.3つの条件が保たれない場合は,あえて外見を重視しないことにしています.

この3つの目的のためには,オムロンや山武などの市販のスイッチ部品を利用するべきです.カタログなどを見ると驚くほど種類があります.また価格もかなり安いです.しかも耐久性は抜群です.もちろんこのような部品の情報は各社のホームページで見ることもできます.
そして商社や問屋など流通ルートさえ確保すれば,かなり短期間で入手可能です.工学部があるような街では,電子部品を扱っているお店もあるのではないでしょうか?工業高校電気科の先生や○○電子とかにお勤めの方からもこのような情報を得ることができるでしょう.販売会社や商品によっては,1個からばら売りをすることも,1000個単位でないと販売できないこともあります.この点も事前に確認しておきたいところです.


写真 スイッチ写真 握っているところ左の写真は,製作したスイッチの一例です.スイッチユニット部品として,アルプス電気のキーボード用スイッチを使用しています.このユニットは,操作力が軽く,ストロークが3.5mmあり,指での操作に適しているようです.また樹脂製キートップも何種類かあり押下面の調整も若干できます.また分解して内部のスプリングを切断あるいは除去することで,操作力も調整できます.ただ現在では生産中止になったそうです.
使用者はこのスイッチを右手に握り,ひとさし指でスイッチを操作します.握りは発泡樹脂(スポンジ)製,ひもは脱落防止です.使用者の希望により,全体で25gと軽く作りました.
握りやキートップの形状変更は,はさみ,カッターナイフ,やすりなどを使い数分間で行います.在宅の方の場合,この素早さが大切だと考えます.
スイッチ部品と握りの部分は,薬局などで入手可能な布テープで貼り付けています.握り部分の洗濯や修理を家庭で手軽にできるようにしました.


写真 スイッチその2写真 スイッチその2を使っているこれは同じスイッチユニットを利用した例です.使用者はこのスイッチを左手の甲につけ,右手で操作します.キートップには希望により500円硬貨大の樹脂板を接着しています.使用者の希望により,自分で取り外しできるようにしています.ループ部分はビーズを使い,なめらかに滑るように工夫しています.このスイッチは,電気関係部品以外を全て手芸店で購入できる材料(布,ゴムひも,ベルクロ,ビーズなど)で製作しました.
「これなら私にも作れるわ」(介護をする娘さんがこのスイッチを見たときの言葉)
在宅の場合,ここが大切なところだと思います.


写真 スイッチその3これは,市販品(パシフィックサプライ株式会社ワイヤースイッチ)の取り付け部分を改造し,車いすやベッドに取り付けやすくしたものです.使用者は,首を動かし,頬で操作します.
市販のスイッチは,適用範囲がかなり広いことが特徴で,使い始めには便利なことが多いようです.このようなスイッチを使っているうちに,徐々に使用する方の好み(もっと軽く,もっと小さく,もっと...)があらわれてくるようです.
改造方法は,『ロッド型ナースコールスイッチ』をごらん下さい.


ここで,説明しているスイッチは,いずれも伝の心の操作にALSの方が使用したものです.ご存じのようにこの病気は進行し,やがてこれらのスイッチをお使いになれなくなる方が多いと思われます.しかし,伝の心には標準のタッチスイッチまたは磁気スイッチ(まばたきスイッチも)があります.これらのスイッチは,かなり重度の方を対象としていますので,そこまでのつなぎと位置づけています.

何人かの方とスイッチ作りでお付き合いしました.その中でみなさんがそれぞれにスイッチに好みがあると感じました.特にキートップの大きさと形状,そしてスイッチのストロークとクリック感です.スイッチの操作力も一概に軽ければ軽いほどよいものではないようです.


03/05/15 公開

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