かならずお読みください注意事項

車いすフットサポート上下調整機構の修理

フットサポート固定ボルトを緩める図

0 はじめに

今時では、使う人に合った車いすを提供するのは基本中の基本と思います。このサイトにおいでになる皆さんの多くもこれに賛同していただけると思います。

もしかしたらそのうち、身体寸法に合わない車いすを患者さんに提供するなんて『虐待』だ!などと過激な言葉で言われるのかもしれません。何しろ最近はあちこちにいろいろイライラしているひとが増えているようですし、また私も修理や点検の際、実際にいろいろな車いす(小児用は小さいくて乗れません)に試乗するのですが、その度毎に自分でも実感します。

さて、ほとんどの車いすでできるのがフットサポートの高さ調整です。試しに当院の新入職員にたずねてみたところ、みんなフットサポートを上げ下げができることを知っていました。(お!これはひとあんしん)ところが調整のやり方やどんな仕組みになっているかを知っている人はとても少なくて残念でした。(一喜一憂)

というわけで、今回は車いすのフットサポート上下調整についてお話します。

1 調整の方法と原理

フットサポート固定ボルトを緩める図、下から

フットサポート下のボルトを緩める(このページトップ写真と上の写真参照)と上下に動かせるようになります。ボルトを緩めても動かないときは、固着していると思われます。そのときはボルトの頭をハンマーなどでたたくと外れて動くようになります。

修理前

フットサポートを引き抜くと、写真のような仕組みが見えます。先端には斜めに切り込みのはいったパイプとその先端にこれも斜めに切り込みがあるナット(めねじ)がついています。

修理前

ボルトを締めると写真下のようにナットが引き寄せられ、斜めの切り込みにより上下の幅(太さ)が大きくなります。反対にボルトを緩めると写真下のようにこれが小さくなります。これらはパイプの中に挿入されていますので、パイプに中で大きくなると中で突っ張り動かなく、小さくなると動くようになるのです。お近くに車いすがあるなら一度試して分解してみるのもいいでしょう。

フットサポートの高さを調整してこのボルトを締めて固定します。緩みを心配し多くの人はこのボルトを強く締めます。しかしフットサポートは、車いすが衝突した際のショックを吸収するバンパーの役割もありますのでほどほどにしておくのがいいでしょう。

またこのボルトを強く締めすぎると別の困ったことが起きることがあります。

2 トラブルと修理の方法

ある日持ち込まれた車いす、整備作業でフットサポートの高さを調整したあと固定ボルトを締めると、ぐにゃりといやな手応えが。いやな予感ほぼほぼ確信で分解してみると

修理後

予想通り、めねじの山がなくなっていました。カワムラサイクルのKA800では固定ねじのめねじはアルミ製です。相手のボルト(おねじ)は鉄製でアルミのめねじより強度はずいぶん高いです。このような強度格差があるおねじとめねじが長い年月押したり引いたりを繰り返すと今回のように弱い方が負けてねじ山がボウズになります。多くの他社製品では両方とも鉄製なのですがカワムラサイクルのKA800ではこんな問題がよく起きます。カワムラサイクルの謎です。

ちなみに上の方の写真をよく見ると鉄製のめねじがついていますがこれは廃棄した他社製品の部品を流用したものです。何年か前に今回と同じくめねじがボウズになった際に付け替えたものです。すでに何回かこの方法で修理してきましたが特に問題も起きていません。しかしいくつか準備していた他社の鉄製部品の手持ちもなくなりましたので、今回は違う方法で直したいと思います。

修理後修理後

準備したのは、M8のナットと自作した厚さ2mmのゴムワッシャです。これを写真の様に組み付けるとボウズになっためねじでも固定できるようになります。調べてみると今回修理したKA800は今年20年生でした。これで地球環境を守ってまだまだ働けます。

3 おわりに

今回もお読みいただきありがとうございました。車いすのフットサポートを上げ下げしたことない方も仕組みを知らなかった方もそんなのしってるよとおっしゃる方々にも楽しんでいただけたと思います。

今回紹介したフットサポート調整固定の仕組みは、もともと自転車のハンドルの調整と固定に使われているものです。私が小学1年生のときに近所の自転車屋さんがハンドルを外して中を見せてくれたのを思い出します。あのときたしか東京でオリンピックが...

ま、奇しくも自転車と車いすは親戚だというお話でした。


2021/06/25 公開

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