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Web Toy 1

おもちゃの取り組み

Webのおもちゃ

あなたの スマホもこれでおもちゃに

0 はじめに

私が勤務しています富山県リハビリテーション病院・こども支援センターの西半分は、こども支援センターです。おもに小児のリハ医療に取り組んでいます。夕方、放課後に訪問すると何人かののこどもたちがデイルームでテレビを見たり、それぞれの部屋で読書や宿題に取り組んだり、車いすで追いかけっこしたり、ぶつけ合ったり(!時々車いすの修理にも呼ばれます。)して遊んでいます。いくらか違ったところもありますがまあ普通の学童保育とよく似た光景です。

でも中には、ベッドから離れることが出来ず一日を過ごすこどもさんもいます。ベッドの上でテレビやDVDを見たり家からもってきたおもちゃで遊んだりしています。 手術のために1、2週間の予定で入院するこどもさんは夏休みや冬休みの時期に多くなるようです。さあ無事手術が終わってほっとひとあんしん。でも二、三日すると退屈でどんどんご機嫌斜めになって病棟スタッフも付き添いのご家族もほとほと困ってしまいます。そんなときには気晴らしのための車いすなどののりものを届けることがよくあります。でもしばらくして自分で動けるようになるとそんな車いすもいらなくなってやがて退院しておうちに帰ります。

なかにはもっと長い間、ベッドの上で過ごすことになるこどもさんもいます。病気がとても重いこどもたちです。とんだりはねたりもできませんし友達とあそぶこともなかなかできません。こんなこどもさんも少なくありません。

こんな場合、大人ならかなり重症でもパソコンを使って好みのことを色々できるでしょう。また学齢児童むけのアプリや教材もすでにたくさんありますのでこちらも何とかなるでしょう。でもさらに小さいお子さんでは文字やことばもよくわかりません。パソコンもコミュニケーションもむつかしいです。やれることがなくて、病気や場所や姿勢のため普通のおもちゃで遊べない、市販のゲームはむつかしすぎて楽しめない、なんとも全く気の毒なことです。

これまでコミュニケーションエイド、Web文字盤の開発を通じて、モニターに画像や文字を表示したり動かしたり、スピーカーから音や声を出したり、クリック(タップ)を感知したり、それを必要とするひとの手元に届ける技術の開発をしてきました。これらを利用すればこんなことで困っているこどもたちの役に立てるのではないかと考えられます。今回はこのようなお話をしていきます。

1 目標はおもちゃ

不自由を持つ年少のこどもさんたちを対象としたこの種の取り組みは、小児リハの発達支援や特別支援教育での学習支援の分野などで取り組まれています。これらを概観すると対象のこどもさんにふさわしい、つまり難しすぎず簡単すぎない課題を選ぶことと、負担の少ない操作方法を採用することが重要なポイントであることがわかります。

また飽きたり疲れたり、喜んだり、怒ったり、泣いたり、笑ったりは誰もが(みなさんも私も)経験するもおもちゃの効能のうちですのから、同じように体験させてあげたいものです。ただいろいろと不自由や不都合なこともありますので、これらには適切な配慮も必要でしょう。

さてこのようないきさつで何の役に立つかはさておいて、ふつうのこどもがおもちゃで遊ぶように、不自由などのため普通のおもちゃで遊べないこどもさんたちのためのおもちゃづくりにとりくむことにしました。

2 試作品の紹介

まず今回は、『何かをすれば何かがおきる』そんなシンプルな因果関係を体験をするおもちゃを考えてみました。またこのおもちゃはその人が使いやすい操作スイッチの適合(設計、制作、試運転、調整など)にも利用できるように考えてみました。

WebToy1

このサンプルは、Web文字盤と同じく、各種パソコンや各種スマホ、タブレットで利用できます。またPWAの機能を組み込みオフライン(インターネットの届かない場所)でも利用できます。(使い方の手順については、 Web 文字盤 7 オフラインWebアプリ 通常の使い方とインストールアンインストールの方法  を参考にしてください インストールするとデスクトップに下のアイコンが表示され、このアイコンから起動できる様になります)

アイコン

起動すると赤い正方形が落ちてきます。周囲を囲んだ灰色の四角の中の部分をパソコンではクリック(タブレットではタップ)するとこの赤い正方形がぴょんぴょんジャンプし壁や床や天井ではねかえり転がります。

クリックやタップの代わりに、パソコンでは、各種代替マウス、できマウス、ゲームパッド、AutoHotKey、視線入力など。タブレットでは、各種代替マウス、iPadタッチャ−など多くの代替入力も利用できます。

このサンプルプログラムには、画面に現れた赤い正方形がニュートンのリンゴのように自然に落下し、地面や壁にぶつかるとゴムボールのように跳ね返り転がります。このような自然な動きはプログラムに組み込んだ物理エンジンの働きです。クリックした時のはねる動きもこれでつくっています。また画面中央に小さな点がありこれで赤い正方形の動きに変化をつけています。

このサンプルは画面に表示されたこれら仮想的な落下、衝突、反発、転がり等の動きに自らのスイッチの操作を通じて参加し、擬似的に体験する(つまり自分もとんだりはねたりころがったりする気分になる)面白さを感じることをねらいました。

画面の動きはかなり複雑ですが操作自体はかなりシンプルです。そのため何回かやると操作するイメージと動作がだんだん合ってきたり、だんだんたくさん動かせるようになったり、くたびれたりなど変化が観察できるかもしれません。またうまくいかない場合もその原因さがしが比較的容易になります。このようにシンプルなおもちゃからはじめると周囲の支える人たちにもこのようなメリットがあります。こどもさんも周りのおとなのみなさんもそろってだんだんうまくできるようになっていただきたいものです。

『何事もはじめからうまくいくことはない』
古くからおもちゃは多くの人々にこのことを教えてくれました。

3 おわりに

今回はWeb文字盤の技術を応用しておもちゃを作ってみました。新しいことを始めるときはごくごく基本的なシンプルなものからはじめると大きな失敗ややり直しが少ないことをこれまで経験してきました。そこで操作に使うスイッチの準備や調整にみなさんのエネルギーを集中できるようにおもちゃの方はシンプルにしました。機器操作支援などの経験がおありなら特に苦労なく試運転できることと思います。

ですがだからといってこどもさんたちになめられてはこれから先々困りますので、『赤い正方形』にはこどもだましではない複雑な動きをさせました。こんな工夫も大切です。

さて、次回は今回のサンプルソフトの解説と手直しとその際の配慮について考える予定です。どうぞお楽しみに。

参考URL


2020/06/12 公開

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