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車いすメンテナンス カイゼン2

車いすの安全について

もし近くに車いすユーザがいて、 その人の助けになりたい、力になりたいとおもったとき、 あなたは何をしたらいいのだろうか?

削ったタイヤ

1 さらに安全のはなし

前回は、車いすの安全や危険防止のためタイヤのメンテナンスが重要なことをお話しした。 基本的には車いすのメンテナンスは空気入れにはじまり、空気入れに終わる。

しかし、タイヤに空気をしっかりいれてブレーキも調整してタイヤが回らないようにしっかり押さえているけれど車いすが動いてしまう。床面とタイヤが滑っている。前後だけでなく、左右方向に滑ったりする。 皆さんにはこんな経験はないだろうか。

2 タイヤの摩擦

新品のタイヤは表面が柔らかくタイヤと床の摩擦が大変大きい。そしてブレーキをかけるとしっかりタイヤの回転が固定され, またタイヤと床面も滑らず、車いすが動きにくくなる。この場合ブレーキがかかっているかぎり安全性はかなり高いと考えられる。 しかし年月がたつとタイヤの表面のゴムは劣化し、固くなりすべすべになり摩擦も小さくなってくる。この場合ブレーキがしっかりかかっていてもタイヤが床をすべり車いすは容易に動くことがある。

このような現象はゴムやプラスチックなどの化学製品ではよく見られる。例えば机の引き出しに古い消しゴムを見つけることがある。おそらくそんな消しゴムは表面が固くすべすべになり鉛筆で書いた文字が思うように消せない。 そんな時は、机などのかたい面でこすって表面を削ると元に戻ることもある。 これと同じことを古いタイヤでもあてはまる。

自動車や自転車ではわざわざこのようなことをしなくても、通常の使用においてタイヤが少しづつ摩耗して摩擦力を維持している。 しかし車いすではこのような激しい使い方をすることは特に高齢の人たちではあまりないので、机の引き出しに忘れられた消しゴムのようなタイヤになる。

3 摩擦の回復

使用した工具

廃棄されそうになった義肢装具のグラインダ(上左)を当方で貰い受けてタイヤ表面を削る作業をもう20年ちかく行っている。 これほど大げさな道具でなくてもやや手間はかかるがハンドグラインダ(上右)などでも同様の作業ができる。 適当なヤスリを使うとこの作業は人力でもできる。しかし人力では台数をこなすには楽ではない。 それぞれの目的と車いすの台数にふさわしい道具を選ぶと効率的な作業ができる。

これまでの当院での経験をまとめると、新品タイヤは2年で表面の劣化がすすみ滑りやすくなる。しかし表面を適宜削ると新品とほぼ同様の状態に戻る。これを数回繰り返すとタイヤの溝も少なくなり、そこでタイヤを新品に交換する。結局約10年でタイヤを交換することになる。タイヤを削ったために特にタイヤの寿命が短くなると心配する必要はない。タイヤが10年持てば十分経済的と考えるべきだろう。ちなみにブレーキも10年位で交換が必要になる。 このように消耗部品を交換しながら大切に使っていくと、車いすは20年くらい使えるようだ。 しかし聞くところによると、車いすをメンテナスなしで使い続けると数年で壊れて使用できなくなることも多いそうだ。 安全に配慮すると、経済的なメリットもあるようだ。

4 まとめ

今回は安全に注目し、車いすのタイヤとブレーキのメンテナンスについて説明した。 多くの人ができる(はずの)空気入れや工具が必要なブレーキ調整、 技能も必要なタイヤ削りやタイヤ交換などが必要に応じて適宜実施されると 車いすの安全を保つことができる。 車いすの安全向上に取り組むならまず、短時間で安全性が大きく改善する空気入れから始めることをお勧めする。 身近に車いすがあったら、タイヤがすべすべしていないか。ブレーキをかけて押したら、タイヤと床面の間が滑っていないかどうかを一度確かめてみてほしい。

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