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ペルテス病の人のための車いす

ペルテス病の人のための車いす

0 はじめに

福祉用具を提供する際には、使う人に合わせたものを提供することが一番大切と考えています。車いすの場合は座面の高さ、麻痺側ブレーキレバーの長さ、フットサポートの有無、エレべーティングの有無などを使う人に合わせます。

最近、ペルテス病のため入院し手術した患者さんのために術後、離床のため車いすのリクエストが寄せられました。ペルテス病は股関節の病気で手術後は両股関節を外旋位(大股開きの状態)で膝を伸ばして腰から足先までギプス固定されます。このような状態では普通の車いすには座れません。また大きく開いた両脚を支える必要もあります。

今回はこのような場合の車いすの準備についてご紹介します。

1 ペルテス病と小児の術後の車いす

ペルテス病は4から8歳の男性(つまり男の子です)に多くみられます。そして手術後はベッドにいる時間が長くなりご機嫌が悪くなります。これはペルテス病にかぎらずどのこどもさんも同じですが、手術前は心配で手術後は痛みでおとなしくしているのですが、1,2日でアニメなどにも飽きて、しまいには泣く、怒る、あばれるなど付き添いの親御さんも看護スタッフもほとほとお手上げ状態になることがとてもよくあります。

このような場合、車いすに乗って病室から外へ出て散歩に行くとすっかり気も紛れてよろしいのですが、ペルテス病の場合は肝心の車いすで困るのです。なによりも脚部挙上部分の幅が足りないことそしてやや背もたれを倒して腰が伸びた状態にするところが困ります。小さいお子さんならギプスも小さくまた体重も軽いのでいろいろできるのですが、ある年齢以上は乗り物があると助かります。

このような要望がこども支援センターから年に数回程度わたくしの所にとどきます。

2 車いすの改造

今回は小学校低学年の男性でヒップから足先まで85センチ、両足先の間隔が75センチという大きさのギプスになりました。もっと身長が大きければリクライニング車いすをベースに改造してもいいのですが、今回は普通型車いす(カワムラサイクルKA800の超低床)を改造することにしました。

ペルテス病の人のための車いす組み立て図1
ペルテス病の人のための車いす区見たて図2

両方のフットサポートをエレべーティング用フットサポートに交換し水平にします。この上に50センチx80センチの合板をひもで固定します。(このほかにもう一回り小さな板もあり、場合によって使い分けます。)

また背もたれの張り調整で、やや後傾気味の背面を作ります。 アームサポートとギプスが干渉する場合にはアームサポートをはね上げます。 必要に応じてシートベルトを使い転落を防止します。

試乗したところ、臀部の前方へのすべりがありましたので、クッション下にタオルを丸めて入れ凸状アンカー形状にして対策しました。

幅が85センチもありますので戸口もやっと出入りできる状態ですが、ようやくこれで動き回れるようになり患者さんも気分転換できるようになりました。

それから三週間後、ギプスの膝下部分が不要になり切り取ることになりました。これで膝を曲げて座れるようになりましたので、通常の車いすを使うことになりました。

この除雪車のような大きな車いすの役目もこれで終わりになります。回収後は元通りに組み立て直し車いすは次の患者さんへ貸し出しました。また大きな合板は次の出番まで倉庫に片付けてておきます。この合板はもう何人もの人に使ってもらいました。まだまだ出番はあるでしょう。

3 おわりに

今回は通常の車いすに手を加えて、頻度の少ない用途に間に合わせる仕事について紹介しました。 必要だからと専用の道具を購入したのはいいけれど、高価だった割りにはほとんど使わずほこりをかぶっているなどと話はありませんか?例えば車いすのように大きな物は置き場所にさえ困り、結局廃棄してしまうこともあるでしょう。 お金の無駄だとか、いやあれは必要だったとか、意見はいろいろあるでしょうが工夫とやりくりでなんとかできる場合も少なくないと思います。

今回ご紹介した事例がみなさんの参考になれば幸いです。

参考URL

ペルテス病について|メディカルノート
https://medicalnote.jp/diseases/ペルテス病

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