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車いすメンテナンス カイゼン3

座面のカイゼン

もし近くに車いすユーザがいて、 その人の助けになりたい、力になりたいとおもったとき、 あなたは何をしたらいいのだろうか?

スリングシートの緩み

1 車いすに関係する事故

車いす利用者の転倒転落事故は重大な結果につながりかねず、各方面でいろいろな対策が取り組まれている。 ここで車いすからの転倒とは、立ち上がろうとしたときに、バランスを崩したり、力が足りなくて十分立ち上がれなかったり、膝折れしたり、つまづいたりして倒れるといったことなどをさし、かなり危険で防ぎにくい事例である。

この他に、浅く座りすぎておしりが十分奥まで乗らず床に尻餅をついたり、座位の姿勢が徐々に前すべりをして床面までずり落ちたなどの事例もありこれらの件数も多い。 それぞれ原因や理由は考えられるが、 滑り座りから前方へずり落ちる場合では、座位の不快感、座面の不安定、臀部の痛み、いったん崩れた姿勢を直せない(あるいは直す方法を習得していない)などのために、もぞもぞと体動しているうちに少しづつすべり落ちていくと考えられる。

2 車いすを快適にするには

座位の快適性を増す方法としてクッションの利用が考えられる。しかし、市販の「ざぶとん」や「円座」では、部分的に目一杯押しつぶされクッションの役目を果たさない『底づき』という状態になるものが多い。さらに滑るため座位はより不安定になりやすく、麻痺のある人が使うには適していない。まず目安としてマジックテープなどで車いすにしっかり固定できるものが望ましい。

カワムラサイクルKA800等の標準クッションは褥瘡対策用途には十分といえないが、一般的用途での快適性の向上に一定の効果が期待できる。また標準クッションの機能が不十分な場合には褥瘡対応クッションなどの利用を検討する。

3 座面の変形と修正

また車いすを何年か使用していると、上の図のように座面が変形してくる。 車いすのような布製シートはスリングシートと呼ばれ、変形して座面中央が凹み座位の不快感や不安定感が増すと言われている。 また座面の前端が伸びて前が下るように変形してすべり台のような形になる。この結果、滑り座りとずり落ちが助長されると考えられる。

カワムラサイクルKA800では、下左の写真のように座面の後ろ半分と背面に張り調整機能がある。これに加えて下右写真の様に、前半分に張り調整ベルトを追加すると座面全体の張り調整ができ、この変形を修正することができる。

張り調整機能と追加のベルト

また下の写真のように座面を若干つまんで工業用ミシンで縫製しても修正できるがこの方法はいくらか練習が必要だ。

縫製による修正

当院ではこの方法ですでに100台程度の加工をしているが、現在までのところ破損事例はない。しかし同様のことを試みる場合は使用するミシンや糸の選定に十分な検討と注意が必要と考える。 座位保持装置などを製作する業者ならこのような仕事を引き受けてくれるかもしれないので相談してみるとよい。

4 まとめ

昔から車いすに座っておしりが痛いという患者さんの声はたくさんあった。実際自分で座ってみるとたしかに痛いのでこれが何とかならないかと長い間探しまわったが、しかしうまい解決方法が見つからなかった。一番の課題はコストで次が耐久性だった。 病院備品の車いすには、ひとりのための車いすとは違ったこのような難しさがある。 それでもいろいろカイゼンを加えているが、今回はその一例を紹介した。 同じ取り組みをする人たちの参考になれば幸いだ。

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