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車いすメンテナンス コトハジメ 3

アメリカバルブ

もし近くに車いすユーザがいて、 その人の助けになりたい、力になりたいとおもったとき、 あなたは何をしたらいいのだろうか?

アメリカバルブ

0 はじめに

車いすメンテナンスではこれまで基本的な作業について説明してきた。

まず コトハジメ1 では車いすのタイヤに空気を入れて快適安全にする方法について話をした。 また コトハジメ2 ではパンクの修理とパンクを減らす取り組みについて話をした。

つい先日当院のスタッフから、がんばっても空気を入れられない車いすがあると連絡があり見に行ってみるとそれはアメリカバルブだった。 そこで今回は、コトハジメ3として、アメリカバルブの話をする。

1 アメリカバルブ

アメリカバルブは、このページトップ画像のような外見をしている。コトハジメ1で紹介した一般的車いすや自転車用のイギリスバルブよりも一回り大きい。主に自動車用タイヤやオートバイ用タイヤに使われている。車いすでは、大型の電動車いすや重量級の車いすに使われているほか、スポーツ用車いす等に使われている幅の狭いタイヤにもまれに使われている。コトハジメ1で紹介した自転車用タイヤに使われているイギリスバルブに比べて、アメリカバルブの最大の特徴は頑丈で信頼性が高いことだ。これは大型トラックのタイヤにもアメリカバルブが使われていることでもわかる。

アメリカバルブ外観

円筒の中に見える突起がバルブコア

アメリカバルブの内部には空気漏れ防止のバルブコアが取り付けられている。バルブコアの先端を小さいドライバの先端などで押すとタイヤの空気がシューと出てくる。バルブコアは専用工具で交換するが車いすの場合バルブコアの交換はずいぶんまれな作業になる。

アメリカバルブ分解

分解したところ 左から キャップ バルブコア 本体

2 空気入れの方法

イギリスバルブ用ノズルアメリカバルブ用ノズル

左イギリスバルブ用     右アメリカバルブ用

コンプレッサを使う場合はイギリスバルブ用の反対側にアメリカバルブ用のノズルがついているのでこちらをアメリカバルブの先端に押し当てて空気を入れる。もしイギリスバルブ用のノズルしかない場合はアメリカバルブには空気を入れることはできない。アメリカバルブ用のノズルの中を観察するとバルブコアの先端を押す凸が見える。ノズルを押し当てるとこれがバルブコアを押し下げ同時にノズルも開き一気に空気を送り込む仕掛けだ。

手押しポンプのノズル英米ノズルの分離

上がアメリカ下がイギリスバルブ用     レバーを上げてロックをはずすと分解できる

手押しポンプを使う場合は、写真のようなノズルのポンプを準備する。イギリスバルブ用のノズルがアメリカバルブ用のノズルに取り付けられている。イギリスバルブ用ノズルしかついていないポンプではアメリカバルブに空気は入れることはできない。こちらのノズルの中も観察すると同じような凸があることがわかる。

アメリカノズルの中突起が見える

ノズルの中にバルブコアを押す突起がある

アメリカバルブのタイヤに空気を入れる場合は、ロックレバーを解除してイギリスバルブを取り外し、それからアメリカバルブに十分差し込んでロックし空気を入れる。

ここでノズルの押し込みが少ないと、バルブコアの先端を十分押せず空気は入らない。タイヤの空気がシューと出てくるまで押し込みすかさずロックする。空気を入れ終わったらロックを外してすかさずノズルを外す。ここでもたもたしているとせっかく入れた空気が外にでてしまう。

ポンプによってはロックレバーを倒したときにロックされるものと起こしたときにロックされるものがあるので事前に確認するとよい。まちがっていると空気はもれるしホースは外れるし仕事が進まない。

文章にすると長々しいが実際の作業は数秒で終わる。この文章を何回も読んで暗記するよりも、実際に作業して空気の動きを理解した方がよほど仕事に役に立つ。知っていてもできなければ意味がない。知識よりも理解と行動がものをいう。

3 おわりに

当院スタッフで自転車の空気を自分で入れたことがない人がかなりいることがわかった。話を聞くと自転車通学の途中で空気が少なくなったときは、自転車店まで押していったのだそうだ。これでは患者さんから、『自分でやるからムシをくれ』と言われて意味がわからないのは無理のない話だ。

当院は交通の不便な立地にある。よって職員のほとんどは自動車通勤している。タイヤには空気が入っていることは多分全員が知っているだろう。しかし空気を点検したり補充したりやっているかが気になるところだ。

空気が不足してタイヤがつぶれてくると、ハンドルもブレーキも不安定になり事故の原因にもなりうる。そんな車をよく見るとドライバは得てして高齢の方だったり女性だったりその両方だったりする。特に最近はセルフサービスのスタンドが多くなり、チェックを自分でしない人のタイヤトラブルが増えたらしい。ドライバの質は実は年齢や性別とは余り関係のない話なのかもしれない。

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