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修理の部  シート

今から考えれば,最もお金がかかったのは,シートです.

最初は座と背のシートを外して,洗濯機で洗いました.他の汚れた車いすと較べるとずっときれいではありますが,新品同様の肘掛けと較べるとやはり見劣りはします.

写真 車いすを下から見る次は自分で作ってみました.義肢装具室の工業用ミシンを使いました.まずまずのものができましたが,製造物に責任が持てませんでしたので,この方法は断念しました.座面シートが破損すると,かなり危険ではあります.そこで業者さんに製作してもらうことにしました.しかしこれでは,一台分で一万円以上かかりました.コスト的に苦しい金額です.
そこで,背のシートは業者さんに製作してもらい,(その後背シートも自作しています.このページ下の追記を参照してください)座のシートは,同じ柄の生地で包みミシンで縫うことにしました.元の座面シートに大きなつぎあてをしたとお考えください.ですからこの修理をした車いすをひっくり返すと,お尻の下に元の生地が見えます.これでコストは半分近くまで下げられました.

話はシート生地のことにもどります.車いすのシート生地はとても目立ちます.特に当院のように,車いすが多いと,病院の風景の一部とならざるを得ません.理由は分かりませんが,車いすのシート生地は,入院で落ち込んだ気分をさらに落ち込ませるような色や柄が多く使われています.どうせやるなら気持ちが明るくなるような工夫をしたいと考えました.汚れが目立たないよりは,汚れが目立った方が病院らしくていいとも考えました.結局,美的センスの欠如のため当科での選択はあきらめ,看護局に生地色見本を託し,決定をゆだねました.その結果,赤チェックに決まりました.女の子の車いすみたいではありますので,男性から苦情がと思われましたが,なにもありませんでした.なおコスト的には,柄物より無地物が有利です.

作業
さて作り方です.まず車いすの背シートを外し,業者さんに渡し,同じ寸法で作ってもらいます.この際,金具は再利用します. ポケットは,利用しやすさとコストを考慮し,中央にふたなしのポケットをつけてもらいました.

座シートの大きさより,前後左右に10センチ余裕を持って,生地を裁断します.周辺をひとえに折り返し縫います.座シートの金具を外し,生地をかぶせ,前と後ろを折り返して,四角く縫います.このとき左右を折り返さないのがコツです.左右は,車いすに取り付ける際に折り返し,ネジで共締めにします.こうしないと金具をあとで入れられなくなります.(本当です)このような縫製作業には,工業用ミシンが必須です.家庭用ミシンでは座シートが厚く,歯が立ちません.

その後
シートの汚れは,ほとんどが座面です.食べこぼし,失禁など背面にはまず行きません.よってその後のメンテナンスは,座面の洗濯が中心になります.
ネジを外して座シートを車いすから外し,金具を取り外し,洗剤をつけてたわしでこすり,すすぎ,脱水,乾燥しています.当初は洗濯機で洗濯していましたが,手作業の方が時間もかからず,きれいになるようです.感覚としては,ズックの運動くつを洗うのに似ています.空調の吹き出し口の下ならば,数時間で乾燥できます.

アドバイス
シートの取り付け取り外し作業を楽にするコツは,ネジの取り付け締め付けに電動工具を使うことです.これで作業効率は飛躍的に向上しますし,ネジの締め付けトルクの管理も出来ます.また不用意なネジの破壊も防げます.下の写真は,作業に使用したドリルドライバーです.その名の通り,ドリルをつければ穴開け作業にも使用できます.
写真 ドリルドライバ


追記

背シートも作れるようになりました.正しくは元々の背シートに新しい布地を縫いつけているのです.まず背シートをベルト部分と本体に分解します.本体部分からポケットを取り去ります.ベルト部分に既についている布地の上から新しい布地を重ねて縫います.また新しい布地で袋を作り,本体を中に入れ縫います.ポケットは本体を入れる前に,袋に縫いつけます.最後にベルト部分と本体を元通りに縫い合わせます.
これは座シートと同様に,大きなつぎあてをした,あるいはカバーを縫いつけたとお考えください.このように布地を追加すると多少ゴワゴワしますが,強度は下がりませんので安心です.


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はじめに

修理の部 昔と今 肘掛けの修理 さび落とし シート フレーム 車輪 アライメント ブレーキ まとめ

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03/05/15 公開

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