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点検の部  退院時点検

退院時点検
入院中にご使用になった車いすを次にお使いになる方にお渡しする前にきれいにし,点検/整備することを目的にこの点検を実施しています.当院の場合,約3ヶ月で退院される方が多いようです.
実際に始めてみますと,点検作業よりも重要なものがあることがわかりました.それはいかに車いすを病棟から回収し,作業を行い,作業後の車いすをどこに保管し,それを需要が発生したときにいかに遅れず供給するかでした.言うなる流通とか物流とかいうのでしょうか?当科がコツコツと作業すればいいというわけにはいきません.当然のことながら病棟の看護師さんの全面的な協力なしには,この仕事は出来ません.病棟の入院患者さんの情報を一番的確に集中して持っているのは,病棟の看護師さんなのです.
取り組み以前は,退院された方がお使いだった車いすは,病棟で消毒し,保管し次に備えました.結果として,清潔ではあるが,汚れている,壊れている車いすを次の方にお使いいただくことになっていました.使用に支障がある故障は,義肢装具科などがその都度,修理していました.ですから故障を早めに見つけて早いうちに修理することはできませんでした.また修理のノウハウなども蓄積されませんでした.
かなり大きな組織ではありますので,ルール作りから始めました.その際,極力看護師さんの仕事を増やさない.こちらの仕事も増やさないことをモットーとしました.車いすの所属は各病棟でした(現在もそうです)ので,本来ならば,修理には病棟師長さんが書類上の手続きをして,修理なり,購入なりの手配をすることになります.
これを,病棟の看護師さんは「退院された患者さんの車いすです.点検をお願いします」と書いた紙を貼り付けて,所定の場所に置くだけ.これを当科が空いた時間に巡回し回収し,作業をして,「整備点検消毒済み」の紙を貼り元の場所に戻します.
書類もはんこもなしにしましたから,師長さんには喜ばれました.ご存じの方はもうお気づきと思います.これはトヨタ自動車が考案したカンバン方式を参考にしました.修理にかかる部品や工具などは,当科でまとめて購入しています.これで病棟師長さんの事務作業はもちろん,事務局の事務量も軽くなりました.
ここまで来ると,看護師さんの協力は万全です.当科にしても,車いすを探し回る必要がなくなりました.事務や予算的な面で事務局の支援があったことも間違いありません.このように実際の作業以外の事柄を整理してかからないと,修理点検作業自体に集中できません.
月に一回の定期点検では,特にタイヤとブレーキの安全面に点検項目を限定したことは,既に説明したとおりです.退院時点検では時間的余裕があるので点検項目も異なります.まず最初に試乗します.ハンドリム,ブレーキレバー,肘掛けなどお使いになる方が実際触る部分に触り,動かす部分を動かし,車いすの基本的機能をチェックします.具体的には,ハンドリムには汚れはついていないか,加速と減速は正常に出来るか,ブレーキをかければハンドリムに力を加えても動かないか.回転は正常に出来るか.ひととおり動かしてみます.その際,異常な振動や音にも注意します.機械部品の故障診断と基本的には考え方は同じです.
また肘掛けやシート面など,乗車時に見える部分の汚れの有無もチェックします.その後,汚れのチェックは,車いすの前後左右から,そして車いすをひっくり返して下からも行います.車いすを下から観察すると,特に汁物の食べこぼし汚れを早く見つけることが出来ます.これらはフレームに付着した後垂れて,下面に付着します.逆にほこりなどは,フレームの上面につきます.
定期点検では,このように車いすの機能点検と汚れ点検の2点に重点を置いています.それぞれをチェックリストに記入し,作業漏れを防ぎます.具体的な作業内容は,修理の項目を参照してください.
退院時点検に回される車いすは平均して一日に2台です.今では全体的に車いすの状態が全体的によいので,作業は比較的簡単に済みます.しかしこの作業を始めたころは,汚れ,錆,故障の三重苦車いすが多かったので,作業は大変でした.でも,オンボロ車いすを使っている病棟にきれいな車いすを持っていったときの,皆さんのよろこんでくれる顔が大変励みになりました.しかしこれは本来あるべき姿に戻っただけと考えるのが,適切なようです.


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03/05/15 公開

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