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修理の部  さび落とし

次に目に付く問題は,フレームのさびです.車いすがさびていると,例え機能的に問題がなくても,お使いになる方は気分が悪いです.気分良くありたいのは,誰も同じです.

当院は,1984年に開院し,その後病棟を順次開いて来ました.ですからこの時期に購入された車いすがたくさんあります.車いすのおよそ半数が15年以上昔の車いすです.海岸が近いせいもあるのでしょうか?さびも目立ちました.

車いすでさびる部分は,フレームとリムなど金属部品のうち,鉄の部分です.鉄フレームの車いすは約60台で,全部古い車いすです.

まず,一台の車いすをワイヤーブラシとCRC556を使い,全て手作業でさびを落としました.たしか作業には何日かかかったと思います.次の項目で説明しますが,先に購入したシート生地で,きれいなシートも作り,取り付けました.ピカピカの作業見本を作るためです. この作業見本の車いすは,大変役に立ちました.まず,このような作業をするために必要な,作業量,時間,道具などが身をもってわかるので,具体的な計画が立案できました.次に,実際の作業を行うのは当科としても,各部署の色々な協力や支援が必要です.これらを得る際の説得材料として,このような見本は,役に立ちました. 

本格的な作業のために購入した工具は以下の通りです.
マキタディスクグラインダ,(その他,ベベルブラシ,ベベルブラシカバー)
マキタ,充電ドリルドライバー
ロブテックスハンドリベッター,HR-002D
約5万円の買い物でした.
ディスクグラインダにベベルブラシをつけてさび取りをします.ドリルドライバは,シートの取り外しに使います.いずれも手作業に較べ作業効率を飛躍的に向上させます.ハンドリベッターは,スカートガードの修理に使います.

作業
フレームのさび落としをするには,まず車いすを分解し,バラバラにします.つまり,車輪,シート,肘掛けなどを外します.フレーム単体をむき出しにしたなら,まず雑巾でほこりを拭き取ります.これをしないと,ほこりをあたり一面にまき散らし,えらいことになります.(本当です!)グラインダの威力は絶大です.頑固なさびも30分ほどの作業でピカピカになります.ただ,さびをあたりにまき散らしますので,排気設備のあるところで作業することをお勧めします.排気設備がない場合には,屋外で作業するのがよいでしょう.
細かい部分のさびはディスクグラインダでは落とせません.最初,ワイヤブラシで落としていましたが,そんな細かいところは誰も気にしないことが分かってからはそのままにしています. 
さび落としには他の道具も役に立ちます.値段の割に役に立つのは,スチールウールです.ナベみがきたわしです.リムやスポーク,アルミフレームにこびりついた汚れを落とすのでしたら,これが一番です.
さび落としで気づいた事があります.それはさびに見えるものの半分は実はさびではないことです.それは,食べこぼしです. カレーでしょうか?醤油でしょうか?茶色でさびに見えます.もちろん雑巾でふけばとれます.
さびを落としたあとは,CRC556をかるく吹き付けておけば十分です.当院では車いすが屋外で雨にあたることはまずあり得ません.最初はメッキをかけることも検討しましたが,コストがかかるためやめました.

その後
作業から2年が経ち,うっすらさびが出始めました.しかしCRC556を吹き付けて,布で軽くこすると簡単にとれます.病院内の空調と,こまめに拭き掃除をしてほこりを取れば,湿気が集まらず,それほどさびは進まないようです.

アドバイス
はじめの頃は,これから果てしなくさびとの戦いが始まるのか予想し,道具にもお金をかけました.ところが,一旦きれいにし,その後ほこりや食べこぼしをこまめに掃除すると,それほどさびは進みませんでした.つまり何年かに一度の大掃除より,何ヶ月に一度のこまめな掃除をする方がずっと楽なようです.この作業は,長年積み重なったさびと縁を切るところまでが大変ですが,あとは比較的楽です.多くの車いすを一度に作業するよりも,こつこつと気長に作業しても成果を期待できます.


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はじめに

修理の部 昔と今 肘掛けの修理 さび落とし シート フレーム 車輪 アライメント ブレーキ まとめ

点検の部 定期点検 退院時点検


03/05/15 公開

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