糖尿病専門外来
国内において糖尿病患者は約1000万人、予備軍を含めると約2200万人が病気の進行や合併症発症予防のための治療や指導が必要な状況にあります。糖尿病は管理がうまくいかず慢性的に高血糖状態が続くと、さまざまな合併症が発症し、進行してしまいますが、 特に血管は細かい血管のみならず太い血管も障害されます。
細かい血管障害には腎臓の障害(糖尿病腎症)や目の障害(糖尿病網膜症)神経の傷害があります。国内では毎年1万6千人余りが糖尿病腎症により透析治療に、約3000人が糖尿病網膜症により失明に至っています。また、太い血管障害として脳梗塞は健常人と比べ4倍、心筋梗塞など虚血性心疾患も5倍も発症しやすくなっています。
さらに、慢性的な高血糖が続くと上気道や呼吸器系や尿路系、胆道系、皮膚などの感染症に罹患しやすく重症化しやすいことも知られています。その他、骨疾患、皮膚疾患、歯周病、認知症、がんとの合併も多いことがわかっています。
従って日頃から基本治療である食事療法や運動療法を実践しながらそれぞれの病態に適した薬物療法で良好な血糖管理を維持していくことが大切になります。
また、当院にリハビリテーション目的で入院される成人は、脳梗塞、神経疾患、骨疾患が多いこともあり成人入院患者の約30%、即ち常時40人から50人の入院患者が糖尿病を伴っています。糖尿病腎症や糖尿病網膜症を併発されているかたもいらっしゃいますので、そのような障害を伴った糖尿病の方に対してもきめ細かに配慮しながらリハビリをすすめると同時に今後再発しないような自己管理のための情報提供も重要となります。
このような現状を踏まえ当院では『糖尿病センター』と称す専門的な糖尿病外来が設置、通院中やリハビリ入院中の糖尿病の適切な治療、管理指導に向けさまざまな取り組みを行っています。
糖尿病専門医・指導医 2名、糖尿病療養指導士を中心とした管理栄養士、看護師、薬剤師、理学療法士、臨床検査技師など様々な専門スタッフがチームでかかわり、治療、ケア、実践、自己管理指導に努めています。
診療・指導体制について
外来通院診療
外来診療・指導スタッフ
- 糖尿病学会認定糖尿病教育施設としての専門的な糖尿病外来診療継続して行います。(2型糖尿病の治療、1型糖尿病の強化インスリン治療、持続血糖モニタリングシステムを利用した管理など)
- 糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害動脈硬化症など糖尿病合併症の検査が可能です。
- 院内他専門外来(眼科、腎臓内科、神経内科、認知症センター、骨、足病変外来、皮膚科など)と密に連携しながら糖尿病合併症の治療や予防に努めることが可能です。
- 管理栄養士、薬剤師、専門看護師による個別の自己管理指導体制も充実しています。
管理栄養士による個別栄養指導
看護師による生活指導
入院糖尿病診療
- 入院中は糖尿病に最も適した適切な栄養を提供します。
- 当院糖尿病支援チームが中心となり入院中の適切かつ安全な糖尿病管理をサポートします。
- 病態に沿って適切な糖尿病治療薬を処方します。
- 在宅後も良好な糖尿病管理が継続可能になるように、糖尿病教室や各種指導を通して自己管理のためのスキルを身につけていただけるよう援助します。
- 転院、施設入所の場合、退院調整の時点で先方の状況(体制や薬剤)に沿った治療薬の調整を行います。
周辺医療機関・施設等との連携について
急性期病院での治療、かかりつけ医での治療、障害を伴った方の回復期治療、高齢の方の治療と支援、福祉サポートとの調整など医療と福祉のネットワークの中で支え健康を維持していただくためキーステーションとしての役割があると考えています。
初診・再診について
- 初診:
- 月~金 午前11時までにお越しください。
事前に電話予約が可能です。
他の医療機関に通院中の方はできるだけ紹介状(医療情報提供書)をご持参ください。 - 再診:
- 原則予約制です。
その他代謝外来
代謝疾患の代表である糖尿病の他、脂質異常症、高尿酸血症メタボリック症候群などの生活習慣病に対しても動脈硬化疾患の発症、予防に向けて診療しています。
「糖尿病教室」のお知らせ
糖尿病専門医をはじめ各専門職(医師、歯科医師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士、看護師)が週1回(4回でクール)講義を行っています。見やすい糖尿病テキスト「学習のしおり」や「糖尿病連携手帳」を配布しています。
日程
13:30~14:10 | 14:10~14:50 | 会場 | |
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A | 病気の知識(糖尿病専門医) | 食事の基本(管理栄養士) | 1F 相談室3 |
B | 食事の管理(管理栄養士) | 歯の衛生(歯科医師) | 〃 |
C | 糖尿病の検査(臨床検査技師) | 薬の知識(薬剤師) | 〃 |
D | 健康管理の実際(看護師) | 運動療法(理学療法士) | 3F 病棟訓練室 |
会場
A~C:1F 相談室、D:3F 病棟訓練室
開催予定日
火曜日開催
「糖尿病教室」風景
当院作成糖尿病テキスト
医師紹介
臼田 里香 (うすだ りか)
- 専門分野
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- 内分泌・代謝領域(糖尿病、高脂血症、甲状腺・副腎・下垂体など内分泌疾患)
- プロフィール(専門医資格等)
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- 医学博士
- 日本内科学会 認定総合内科専門医、指導医
- 日本糖尿病学会 認定糖尿病専門医、指導医、全国学術評議員、中部支部小児糖尿病担当委員
- 日本小児思春期糖尿病学会 全国評議員
- 日本内分泌学会 認定内分泌代謝科専門医、指導医、全国評議員、男女共同参画推進委員(JES We Can)、北陸支部評議員
- 日本人間ドック学会 認定専門医
- 日本医師会 認定産業医
- 日本甲状腺学会 会員
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【県内活動】
富山県透析等発生予防協議会委員ならびにワーキング委員
富山県糖尿病協会常任理事
富山県糖尿病対策推進会議員ならびにワーキング委員
- 主な疾患と治療について
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生体は種々の作用を持つホルモンが調和して、生体の恒常性を維持しています。この機能が内分泌・代謝です。
これらの機能が異常をきたして発症する病気には糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症、メタボリック症候群などの生活習慣を基盤とする代謝疾患、バセドウ病、甲状腺機能低下症、甲状腺腫瘍などの甲状腺疾患、先端巨大症や尿崩症などの下垂体疾患、副甲状腺疾患、クッシング症候群などの副腎疾患など内分泌疾患があります。
これらは症状がないまま慢性に進行しいつの間にか全身に障害をきたし、ついには心臓病や脳血管障害、重症感染症などの重症疾患発症のリスクとなります。超高齢社会の今、健康長寿のためにこれら内分泌・代謝疾患を早期に発見し適切な治療を提供することが極めて重要であり最新の医療情報をもとに的確な診断、適切な生活指導と個々の病態に合った薬物治療を行っています。
- 診療にあたって、心がけていること
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私は内分泌代謝科専門医、糖尿病専門医として約30年、急性期病院で多くの進行した内分泌・代謝疾患の方々の診療をしてきました。その経験の中で感じてきたことは合併症を伴ってからではない早期診断と早期治療の大切さです。
代謝疾患・内分泌疾患とも、直ちに生命予後に関わる病気ではありませんが、生涯にわたる治療が必要な場合も少なくはありません。
しかし、症状がない時期に病気を理解し治療や検査に前向きになることはとても難しく、説明や説得に応じていただけない事もあります。良い治療を提供するためには私自身日々最新情報を学び研鑽をつむこと、そして根気強く親身になってあらゆる努力を惜しまないことを心がけています。患者さんの生涯を見据え、関係する医療機関や施設、行政機関などと連携しながら最良の医療が提供できるように努力していきたいと思います。